第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
は五条が、自分以外の人間にはまだましな態度を取ると思っていた。
興味が無ければ無視、興味があっても適当に返事をする。
いい加減な態度をとることはしばしばあったが、それでもまともに話を聞こうとする姿勢だけはあった。
だからこそ。
初対面の人間に、こんなあからさまな態度をとる五条を今初めてみた。
五条を見上げることしかできないの視線を感じてか、怒りに満ちていた顔の男は、途端にバツの悪そうに視線を彷徨わせた。
そして、呼びにくそうに彼女を呼んだ。
「……オマエさ」
いつもの威厳に満ちた冷たさは、やはり感じられない。
それどころか、小さくて不安定だ。
一瞬の躊躇の後、すっと差し出された無骨な指先。
途端に震えた身体は条件反射だ。
そんなの震えに、五条の手が止まった。
迷うように宙を彷徨う腕が僅かな時間をかけて、ゆっくりと戻る。
しかし、五条はすぐにポケットから何かを取り出し、の目の前に持ってきた。
「これ……」
反射的に受け止める。
手のひらに静かに乗せられたもの―――それは青い髪ゴム。
五条に貰い、先程の髪とともにゴミ箱に投げ捨てられたもの。
なのに、なんで。
これが今ここに。
いや、そんなことが問題なんじゃない。
―――目の前の世界が、ぴしりと固まった。
じわじわと黒いものが腹の底から湧き上がり全身を染めていく。
重くないはずなのに、手が震えた。
あの時は、ゴムを貰えたことが嬉しくて、でも緊張しすぎて「あ、どうも、です……」だなんてそっけない態度をとってしまった。
だけど今は、そんなそっけない態度も悪態もなにもつく余裕などない、
「……なんですか、これ」
自分でも驚くほどに、震える声がでた。
「なん、ですか……これは……っ!!」
五条が口を開いた。
しかし、何か声を発することなく閉ざされる。
五条の視線が、の短くなった髪に注がれる。
まるで、気味の悪いものを見たとばかりに、皺の寄せられる顔。
黒かった視界が、真っ白になり目眩で世界が揺れる。