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【雑多】いつかどこかで【短編集】

第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】






「先、輩……」

五条に抱き締められるなど、初めてだった。
いつも、机や床に押し付けられて事を済ますだけだった。
だからこの慣れない感触に戸惑う。
ましてや、の前で怒鳴り散らす五条など。
川崎くんのぽかんとした顔に見つめられ、途端に羞恥に襲われた。
道端の真ん中、公衆の面前、そして今日は祝日の昼間。
確かに他の通りより人は少ない。
が、それでもだ。
すれ違う人々はちらちらと彼らを見ている。
人前で誰かに抱きしめられるなど、しかもそれが、あの五条だなんて。

「ちょっ……は、離してください!!」

逞しい腕の中で暴れてもびくともしない。
それどころか、腕を掴んでくる力は増すばかりだ。
細い腕が音を立てて軋む。

「い、痛っ」

思わず声を上げれば、はっと目を見開いた五条が慌てた様子でを離した。
これには彼女のほうも目を見開いた。
僅かに後ずさった男を見る。
五条はいつも冷静にを苛む。
痛いだなんて叫んでも、男が聞き入れたことはなかった。
それが、腕を掴まれて悲鳴を騒いだだけで手を離すだなんて。

腕を抑えながらじりじりと後ずさるに、五条は狼狽したように視線をさ迷わせた。
意味が分からず首を傾げるは五条をじっと見つめた。
こんな落ち着かない、罰の悪そうな顔をした五条など見たことがない。



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