第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「どうしたんだよ、襟なんて立てて。てか今日憧れの先輩の所に行くとか―――」
川崎くんが言葉を詰まらせた。
は川崎くんの視線から逃れるために後ずさったが、遅かった。
「オマエ」
つかつかと歩みよってきた彼に、腕を取られた。
「ちょっと……!!」
「誰にやられた」
よりも目線の高い川崎くんの眉間には、皺が寄っていた。
その視線は、の短くなった髪に注がれている。
「別に、なんでも、ない」
「目、赤いけど。もしかして泣いてた?」
「泣いてないっ」
顔を隠そうとするの腕を川崎くんが掴んで引っ張る。
近い距離。
にとって川崎くんは気の合う友人。
中学生の頃は休み時間にくだらない話をしたり、授業中も教科書やノートの貸し借りをする仲だった。
傍から見ればカップルに見えたかもしれない。
だが、2人はお互いにそういう気持ちは抱いておらずむしろそれを拒んだ。
人一倍正義感が強く、優しい川崎くん。
高校生になってやんちゃな見た目とは裏腹に、この遠慮のない態度は変わらない。
それが嬉しくもあるが、今は放ってほしかった。
しかし、川崎くんは正義感が強い。
ここで引き下がるはずはない。
「嘘つくなよ。目腫れてるし……それに、これなんだよ」
悪びれた様子もなく川崎くんが短くなったの髪に触れた。
そして息を呑んだ。
「自分で切った」
「は?んなわけねえだろ。だってこれ、切ったっていうより千切れ―――」
「なにしてんだよ」
そんな時だ。
二人の間に冷たい声が落とされたのは。