第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
「長い」と言って貰えた髪は「気色悪い」ものとして断罪され、捨てられた。
縋るような気持ちすらも否定された。
自身も否定された。
過去の憧憬に縋っているだけだとは言え、伸ばし続けていればいつか髪を褒めて貰えるかもしれないだなんて。
何を血迷ったことを考えていたのか。
しかも髪を切られたくらいで泣くだなんて。
が最も嫌う、弱い人間そのものじゃないか。
強要される肉体関係以外、泣いたことはない。
弱さの象徴だと。
肉体面が弱いならせめて精神面では強くありたい。
聞こえはいいが、これはの自己満足だ。
自分が強くなるまで、認められるまで涙は流さない。
そう心に決めていたのに。
まさか、こんなくだらないことで泣いてしまうだなんて。
再び、自嘲の笑みが漏れる。
「馬鹿だな、私……」
口に出してしまえば、より惨めさは募った。
女々しい自分が、ちっぽけな人間に思えた。
「?」
ふいに名を呼ばれ、声のしたほうをちらりと見れば、昔馴染みの姿があった。
「……川崎くん」
「昨日ぶり」
にやりと笑う彼は、昨日たまたま再会した同じ中学校出身の少年、川崎くんだ。
高校デビューなのか、黒い髪の毛には金色のメッシュ、毛先はパーマでウェーブがかかっている。
目尻のつり上がった少し色素の薄い茶色の大きな瞳。
今から高校の友達と遊びに行くらしく、髪の毛もワックスでキメている。
中学の時よりだいぶ背の伸びた川崎くんは、もうと背丈を比べることもない。
昨日、バイト帰りだった川崎君は偶然出会ったの買い物に付き合っていた。