第4章 【五条悟】嫌よ嫌よも。【R18】
だけど、嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて、仕方がなかった。
恋、などという確かなものではないけれど、彼に、優しい目で見つめられたいと想っていた。
でも、は次第に五条に嫌われていった。
どうしてこれほどまでに嫌われているのか理由はわからない。
もしかしたら初めから嫌われていたのかもしれない。
今思うと、あの時髪ゴムを渡されたのも、ただ単にうっとおしくて目障りだった、という理由だったのかもしれない。
は万年3級術師でお世辞にも強いとは言えない。
格闘のセンスが優れているわけでも状況を瞬時に分析できるような冷静な頭脳もない。
五条に冷たい態度をとられることも、氷のように冷えきった言葉を投げ掛けられることも、蔑まれるような目で見下ろされることもしょうがないことのように思えた。
最強から見れば、のような術師はいてもいなくてもいいようなもの。
それでも、あんな関係を強制されたことは苦痛だった。
女の性をもつ人間としての自分を蔑まれた。
性の冒涜という、卑劣な手段によって。
そこまでするのかと愕然とした。
嫌いな人間というだけでこんなことをするだなんて。
五条が理解できなかった。
を組敷く時の五条の冷えきった嘲笑。
心底をいたぶることを楽しんでいる笑みに、同情すらも向けられない自分が、どうしようもないまでに嫌われている自分の存在が苦しかった。
それでも、一番理解できないのは自分自身だ。
信頼も信用も憧憬も、何もかも崩れ去ったというのに、まだ優しく見つめて貰いたいだなんて。
今からでもいい、優しく髪に触れて貰えたらだなんて。
貰った髪ゴムと一緒に、小さな期待を捨て去ることもできないなんて。
どうしようもないほどの己の馬鹿さ加減に、呆れてものも言えない。