第3章 治療【宇髄天元】
ピシッと固まる二人。
さっきまで鬼の形相で捲し立てていた二人の表情は、まさしく"目が点"状態だった。
「どうしましたかぁ?続けないんですかぁ?私にもお二人の仲睦まじい様子を見せてくださーい」
私の横に立つ凛とした可愛らしいお方。今の私からすれば女神様。
蟲柱の胡蝶しのぶ。
すごく綺麗で可愛い笑顔のはずなんだけど…。
…額に僅かな血管浮いてます。しのぶさん。
「…チッ、…俺ァ、帰る」
「…興が醒めたわ」
二人は合わせていた視線を外すと同時に投げるように互いの手を離した。
不死川さんが私としのぶさんの間を割って部屋を出ていこうとした時。
「誰が帰っていいなんて言いましたか?その耳は飾りなんでしょうか?そこに大人しく座ってください?でないとうっかりお茶に毒でも混ぜてしまいそうです」
未だに崩さないし可愛らしい笑顔とは裏腹に、内容はすごい真っ黒なしのぶさん。
そんな彼女を敵に回したくないのか、不死川さんは溜息こそついていたが、大人しく近くのベッドに腰掛けた。
「円華さん、とりあえず不死川さんの手当をしてあげてください」
「は、はい!」
言われるまま不死川さんの手当にとりかかる。
自分でやったのか無造作に巻かれた包帯には血が滲み出ていて、それを解くとざっくりとした深い切り傷に顔を顰める。
「また自傷ですか…?」
「…テメェも相変わらずだなァ」
先程とは打って変わって、いつもの様にゆっくりと話す不死川さん。
胡蝶さんが間に入ってくれたおかげで、落ち着いたみたいだ。
手の震えこそ無くなったけど、傷だらけの腕は見てて痛々しい。
横ではしのぶさんが崩れない笑顔を宇髄さんへと向けていた。
「宇髄さん。貴方もあなたですよ?円華さん独占されると仕事が滞るんです。分かってます?」
「独占したつもりはねぇよ。俺も傷見せに来ただけだし?」
手をヒラヒラと泳がせる宇髄さんはいつもの様に派手に開き直っちゃった。
大人なんだかそうじゃないんだか…。
「そうですか。そういう事でしたら……お二人とも、三ヶ月出禁でよろしいですか?」
「…あァ?」
「…はぁ!?」
二人の息ぴったりの返答と同時に、私も包帯を巻き直していた手が止まってしまった。