第3章 治療【宇髄天元】
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び、…っくりしたぁ。なにあの空気。
宇髄さん途中から何か怒っていたし、不死川さんも普段は普通に話してくれるのにめっちゃ殺気立ってるし!
「あー…戻りたくない……はぁぁ……」
体の力が抜け落ち、つい深い溜息が出てしまう。
とは言え、早く戻らなきゃまたあの殺気に当てられてしまうと思うと、手際よく治療に使う包帯や消毒液、縫合も見越して準備を終えていた。
そういえば…宇髄さんと不死川さんって仲良いのかな?
不死川さんはああ見えて思いやりある人だし、宇髄さんは面倒見いいし。ウマが合いそう。
そんな事を考えていると、気付けば部屋の前まで来ていた。
気持ちを整えるように軽く深呼吸をし、扉の持ち手をグッと捻った。
いざ……!
「…お待たせしまし 「はぁ?派手に勝手抜かしてんじゃねぇよ!お前に気ィなんて有り得ねぇんだよ!」
「んなもん、円華次第だろうがァ!…あァ、それとも何かァ?自信がねェのかァ。随分と頼りねぇなァ!」
たったさっきだ。ホント数秒前。"ウマが合いそうだ"と思ったのは。
その二人が、それも大の男が喧嘩腰で両手を互いに掴み合い息巻いていた。それも内容的に私の事だ。
え、わ、私何かした、っけ?…もしかして悪口言ったから?あっ、偉そうに説教じみた事言った事かな…!?いや、でもその時には何も言われなかったし…。
訳が分からないまま、背中を冷や汗が伝う。
目の前の光景に扉の持ち手を掴んだまま動けずにいると、私に気付いた二人の顔がこちらを向いた。
ふ、二人とも…、目っ、目が怖いんですけど!?
すんごいつり上がってるんですけど!!
「遅せェ!何時まで待たしてやがんだァ!」
「こんな奴放っとけ!!あのチビ共にでも投げてろ!」
い、いや…。え、私どう動けば正解なの!?
どっちも正解じゃない気がするのは私だけ!?
収集がつかず、未だに睨み合う二人をどう扱えばいいのかも分からず、既に泣きそうだ。
その時、背後から肩に乗った"何か"に体が飛び跳ねた。
あぁ…神様。仏様。
こんな私に希望を残して下さりありがとうございます!
このご恩は決して忘れません!!
大袈裟だが、この時ばかりは心の底から本当に感謝した。
「あら。まさかお二人がこーんなに仲がよろしいだなんて、全然知りませんでした。素晴らしいですね」