第4章 寝顔【不死川実弥/*】
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「…ん、」
ふ、と浮上した意識の中、重い瞼をゆっくり開くと部屋の辺りは明るくなっていた。
だが、そうと分かっていても体は睡眠を欲しているのか、モヤがかかったように頭がぼうっとする。
「…よォ、起きたか?」
不意に頭上から掛けられた声に閉じかけた瞼が止まった。顔を向けると実弥が肘枕をして、見下ろしていた。
「実弥、くん?おはよー…」
「あァ?もう昼だぞ」
「えー、私そんな寝てた?」
「中々起きねェし、腹減ったなァ」
「起こしてくれたら良かったのに…」
「あァ?俺がんな事する訳ゃねェだろーが」
まだ少し眠気が残る目を擦りながら、実弥との他愛もない会話が進む。
───明け方近くまで互いを求め合ったのを覚えているが、その後からは意識を飛ばしてしまったのか、何も覚えていない。
体にベッタリついていた互いの体液は綺麗さっぱり拭き取られていて、夜着も帯が結ばれ整えられていた。
クワっと大きい欠伸をする実弥をジッと見つめていたら「んだよ」と乱暴な言葉が返ってくるのに、表情はどこか穏やかで可愛く感じてしまうあたり円華も相当だ。
「実弥くんが好きだなァって」
自然と出た言葉に実弥は目を見開いたが、ゆっくり上体を起こした実弥にクシャっと頭を掻き撫でられる。
「…犯されてェのか、テメぇはァ」
「んー…優しくしてくれるなら?」
円華の返答が予想外だったのか、ピシッと目を見開いたまま固まる彼の挙動が面白くてつい笑ってしまった。
「っ、ふふ、ごめ、やっぱ、無理です…ふっ」
「…チッ、調子に乗りやがって」
バサっと頭から布団を被せられるが、布団から顔半分出すと同時に視界が暗くなり、額に感じる暖かい感触に目を見開いた。
「仕返し」
ニッといたずら顔で笑う実弥はあどけなくて、その瞳がすごく暖かくて心臓の音がトクンと跳ねる。
「実弥くんのすけべ…」
「あァ?お前ェに言われたかねェよ。あんだけ散々俺の咥えといて」
んべ、っと舌を出して見せた実弥にカァっと顔に熱が集まった。
「なっ!…~っ、それ今言う?」
隠すように布団を被り直す。
日頃から任務をこなす円華達にとって、こんな些細な日常すらとても大切で、自然と笑みが浮かんだ。
───幸せな日常がずっと続きますように。
2024.8.10
Fin