第3章 治療【宇髄天元】
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行き過ぎた自傷行為に回復が遅れ、仕方なく蝶屋敷へ出向いたのがきっかけだった。
興味も無ければ、存在すら知らなかった女。
手当の際、微かに震えるの手を見て、柱相手に怖気ずいた軟弱な小心者だとしか思わなかった。
だが、二度目に出くわした時。
『自分を傷付けるのは…、追い詰められた時だけにして下さい』
そう言った女の手は相変わらず震えていたが、み空色の眼から視線を逸らす事が出来なかった。
ただの小心者かと思えば、"するな"と綺麗事を抜かす訳でも無く、正面切って意見してきた女に興味が湧いた。
聞けば、手の震えは同士の傷を見て心を痛めているとか甘い事を抜かしちゃいたが。
それからはこの女と会うごとに、張り詰めた糸が緩んだみてェに、いつの間にか心地のいいもんになっていた気がする。
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「よぉ、不死川。お前俺の女に気があんの?」
見なくても分かる程に敵意剥き出しの声がかかる。
円華が出て行くのを追っていた視線を正面へと向ける。
そこには表情一つ変えず腕を組んでいる宇髄。だが、真っ直ぐ向けられた射抜くような赤い眼が静かに圧をかけてくる。
「…お前に答える義理なんざァねェ」
「いや、派手に大ありだろ。あいつ俺の女なんだよ。そこんとこ分かってんの?」
俺の女俺の女うるせェ。
別にあの女とどうかなんざ考えたこともねェ。
宇髄の女だと知ったのはしばらくしてからだが、どうも思っちゃいなかった。
…こいつに抱かれているアイツを見るまでは。
まさか当人達に自覚させられるなんざ思いもしなかったが。
「俺が何処で何しようがお前に関係ねェだろォが」
「だからさ!関係大アリだっつーの!話聞けよ。…まさか本気な訳ねぇよな?」
「…少なくとも遊んでる暇はねェなァ」
俺の返答が気に障ったのか、静かに睨みを利かしていた宇髄の表情が険しくなる。
重い空気が流れる中、先に動いたのは宇髄だった。
足音一つさせず歩み寄る様はさすが元忍びとでも言うべきか。
隊服の詰襟を力強く掴まれた。
「… アイツに手ぇ出してみろ。いくらお前だろうが、容赦しねぇぞ?」
「あァ?…面白ェ、上等だァ。お前が負けりゃ余計な口出しされねぇしなァ」
話し合いなんかより、よっぽど早い。
自然と湧き上がる闘争心に口角が弧を描くように釣り上がった。