第3章 治療【宇髄天元】
円華が変な事を言うから想像しちまった。
んなもん考えたくもねぇ。
そもそも暫く顔も見れなかった円華に会うために蝶屋敷に来ただけで、何も怒らせるつもりもなけりゃ、怖がらせるつもりもない。
「そ、それ監禁だからね?危ない事言ってるの分かってる…?」
「監禁、ねぇ…派手にいいかもな?…俺だけの円華でいてくれよ」
彼女の頭を引き寄せ耳元で囁くと、茹でダコのように顔が真っ赤に染まり、わなわなと空いた口を震わせていた。
そんな円華の腕を引っ掴み、胡座をかいた上に座らせ、背後から抱きしめると花の香りが鼻を掠めた。
「ちょっ、宇髄さん!怪我してるのにっ」
「たかがかすり傷だって言ってるだろ?…なぁ、円華。…怪我しねぇって約束は出来ねぇが、お前の気持ち考えてやれなくて悪かったよ」
普段怒らねぇ円華があそこまで機嫌を損ねるとは思ってもみなかった。
俺を想っての事だと分かっちゃいるが、心配かけちまった事を考えると、素直に謝罪の言葉が出るほど、俺も大概円華に弱い。
「…鬼のように手足が再生するわけでもないんだから…、もっと自分を大切にしてほしい。確かに引けない状況もあるとは思うけど…。…不死川さんなんてまた自傷してさ…。手当てするのすんごく辛いんだから…」
震えた声で話し出したと思えば、不意に出てきた不死川の名に体が勝手に反応する。
確かにあいつは自分の稀血を利用すっからすぐに自傷しやがる。
だが、今この状況で他の男の名前なんて出すか、普通。
…いや、コイツなら出すか。派手に面白くねぇが。
自然と円華を抱き締めた腕に力が入る。
「ぅ…っ、宇髄さ、ぐるじ…っ」
「あ、あぁ。わりぃ…不死川はいつもの事だろ?気にすんなって」
「それがね!?聞いてよ!毎回私に手当てさせてさ!?あの人、私がどんな気持ちでやってるのかも全部知ってるんだよ!?なのにまた来るわ、って帰ってくの!もう誰の傷も見たくないのに!」
……待て待て、どこから突っ込むべきか、全部が聞き捨てならねぇんだが?
んだぁ?あいつ円華目当てで来てやがんのか!?
治療っつう事はあいつの体に触れるワケで……、いや、派手に何してくれてんの、あいつ!