第3章 治療【宇髄天元】
───蝶屋敷の病室。
「宇髄さんのバカ。
ドジ。
おたんこなす。
見栄っ張り。
派手柱。
美丈夫。
色魔。
すけべ。」
幼稚な事だっていうのは十分理解してる。それでも止まらない。それもこれもこの人のせい。
「…よくもまぁズラズラと。後半、派手におかしいけど態とか?」
ベッドの上で胡座をかき、腿に立てた肘で頬杖をついている彼は鬼殺隊の柱であり、恋人でもある宇髄天元。
その声は落ち着いていて、悪口に怒る事もしない。その上私の頭を撫でてくれる優しい手。
「──っ、宇髄さんのバカ!すっごく心配したー…っ、心臓落っことすと思ったー…!」
彼の優しさに加え、今朝の事を思い出してしまい、また涙が込み上げてくる。
───事の発端は今朝、私が玄関掃除をしている時。
目の前に現れたのは、怪我人の隊士を二人担ぎ、加えて彼自身も血塗れ状態で私の前に現れた宇髄さんだった。
そんな血塗れの恋人を目の当たりにして平然としてられる程、私は人間できていない。それはもう狂ったように焦り泣き、慌てて治療して今に至る。
宇髄さんは腹部に過剰な程に巻かれた包帯を擦りながら「大袈裟な」と笑う顔が引き攣っているけど、私はもうそれどころじゃなかった。
「いやさ、お前も傷見たろ?ただのかすり傷だっつーの。つうか、ほとんど他の奴らの血だからな?」
かすり傷だった事は心底安心した。確かに鬼殺隊である以上、生傷が絶えないのは百も承知だけど、私とは正反対に平然としている宇髄さんにますます不満が膨らんでしまった。
「…じゃあ宇髄さんは私が血まみれで帰ってきても何とも思わないんだよね?」
つい意地悪く尋ねてしまった。
宇髄さんが目を見張り固まってしまったけど、質問してしまった以上、私はジッと彼を見据え返答を待った。
彼は目を閉じたかと思えば顎に手を添えてしばらく考えた後、にんまりと笑みを浮かべた宇髄さん。
「……そうだなぁ…、怪我なんざしねぇように派手に閉じ込める事にするわ」
「──っ」
えっと…、…目が、全然笑ってないんですけど…?
それになんか血管浮いてるんですが…?本気?この人。
……いや、うん。やりかねない。この人なら。