第6章 隣のゲーム実況
「どうした? ちょっと寒かった?」
そう言ってキヨさんは立ち上がり、エアコンの前に行く。エアコンからは冷風が出るように設定してあった。キヨさんはエアコンのリモコンを手に取る。
「ちょっと温度上げるか。ユメ子ちゃん体調悪いんだもんな」
そうじゃないんだけど、他になんて言ったらいいか分からなくて黙って俯く。その内にキヨさんはエアコンを操作して温度を変えたみたいだ。少しだけ気温が変わった気がした。
「よし、ゲームの続きするかぁ」
とキヨさんが当たり前かのようにパソコン前に戻ってくるので、私は少し椅子をズラした。キヨさんはすぐに気付いた。
「なんだ? ここ狭かったか?」
「う、ううん……!」私は首を振った。「ただ、ちょっと私、臭うのかなって……」
「え、臭い?」
とキヨさんは言うなり深く息を吸って吐いた。キヨさんはぱちくりと瞬きをした。
「何言ってんだよ、変な臭いしないよ」
「そ、なんだ……」
その時脳裏で横切る誰かの声。
「ねぇ、なんかちょっと臭くない?」
私に言った訳じゃないかも。でも私が来たあとすぐにそう言ってた。だから……。
「体調悪くなってきたか? 布団で横になる?」
キヨさんに声を掛けられてハッとする。今私は自分の部屋にいて、ここにはキヨさん以外誰もいない。
「だいじょうぶ……」
と私はなんとか言うが、キヨさんは既に布団を整えてくれていて、休みたかったらいつでも言ってな、と優しく言葉を掛けてくれる。私はなんとかうんって頷いてみたけど、また怖い夢見るとかと思うと、もう寝たくなかった。
「ねぇ、キヨさん」
「んー?」
「私、もう寝たくない……」
「え」
私の言葉に、キヨさんはびっくりしたような顔でこっちを見た。それもそうだろう。私、変なこと言ってるよね。
「具合悪いなら寝た方がいいと思うけどなぁ」
「でも……」
また怖い夢を見たら? 今度こそ死んじゃうかも、なんて。夢の中じゃ死なないのにそんなよく分からないことを考えてしまう。
「私、今日は寝ない。ずっと起きてる」
「うーん、ユメ子ちゃんがそう言うなら……」