第5章 怖い夢
「え、怖い夢?」
昼ご飯、カップラーメンを食べたあと、キヨさんがホラーゲームは苦手なのかと話を振ってきたので、私はごく自然に怖い夢の話をすることが出来た。
「最近、よく見るの……だからあまりよく寝れなくて」
と私は俯く。思い出すだけでもゾッとする赤い影と刃物みたいなもの。もう夢なんて見たくなかった。
「だったら違うゲームしてみる? この前友達とやった面白ぇゲームがあってさ」
「え、いいの……?」
「ここまで話して置いてダメってことはないだろ」
キヨさん、ゲーム実況してなくても優しいんだな。
「……やる」
「よし、やるか!」
そうして立ち上がると、キヨさんはすぐに立ち上がってパソコンに向かった。だが、すぐにキヨさんは気付いた。
「あ、コントローラーもう一つないと出来ないんだったわ。俺、一回家に帰って取りに行ってくるわ」
「え」
またこの部屋で一人になるの?
「いやだっ」
私はほぼ反射的にキヨさんの袖を掴んでいた。キヨさんはびっくりして私を振り返る。私はさすがにワガママ過ぎたと手を離した。
「ごめんなさい、キヨさん……」
怒られるかと思った。けれどキヨさんはその場でしゃがんで私と目を合わせてくれた。
「やっぱり、怖い夢は怖いもんな。分かった。一緒にいるよ」
「え」
それがどういう意味か分からなくて、立ち上がったキヨさんを目で追う私。キヨさんはパソコンの前の机に腰を下ろした。
「ユメ子ちゃんが見ているだけでも楽しいゲームってなんかあっかなぁ……あ、これとかいんじゃね? 俺結構やり込んでてさ……ユメ子ちゃん?」
私が何も言わずに立ち尽くしているからか、キヨさんが不思議そうにこちらを向いた。キヨさんって、確かネットの話だと結構大人なんだっけ。こんな友達みたいに気さくな人って、大人でもいるんだな、と私はキヨさんの目を見つめ返してそう思った。
「私、キヨさんのゲーム実況見てる」
と私は言って、折り畳んで仕舞っていたもう一つの椅子を取り出した。キヨさんはははっと笑った。
「まるで俺がゲーム実況者みたいになったみたいだな。ユメ子ちゃんだけの独占配信だ」
なんて冗談っぽく言って。