第27章 深層
「あれ……?」
瞬きをしたと同時に、私はまた、学校の中に引き戻されていた。今度は教室の中で、私が教卓の前に立っている。
だけどどこを見ても教室は赤い何かで汚れていて、机や椅子はあちこちにひっくり返っていた。そこに、赤い化け物が三体いた。
まずは廊下側に、口しかない化け物。だけど、私たちが倒したあの化け物とは違って、手足がなく、床にへばりついている塊に見えた。例えるなら溶けかけたアイスみたいな。
そして窓側には、両耳がやたらデカイあの化け物がいた。あれは夢の中で見た化け物と同じで、なぜかわずかにゆらゆらしている。あの化け物は目も口もない。
もう三体目は、私の目の前にいる、刃物を持った化け物だ。私が何度も夢の中で見てきた化け物で、さっき倒した化け物もコイツだ。
こうして直視するのは初めてだったが、よく見るとその化け物は片腕がなかった。あとは歯をむき出した大きな口だけがあり、私を見つめているみたいだった。
「……これが、ユメ子ちゃんが見ていた化け物だったんだな」
「キヨさん……!」
急に声が聞こえてきてびっくりしたが、キヨさんはいつからいたのか、私の隣に立っていた。キヨさんは安心させるようにニカリと笑った。
「悪い悪い、びっくりさせちまったか」
「う、ううん……」
そんな会話も短く終わらせ、私たちは三体の化け物へ視線を戻した。化け物たちはそこから動き出す気配はなかった。だけど、私がどうしてこんな怖い夢を繰り返し見ていたのか、少しだけ、分かった気がした。
「私、転校してから、ずっと周りの目が気になっていたの」
私が急に話し出したからキヨさんはびっくりするかなと思ったけど、キヨさんはその場でしゃがんで私と目を合わせてくれた。へぇ、そうだったのか、そうだよなって言ってくれたから、話を続けようと思って。
「女子たちが、なんでも臭い臭いって言うから、私も、臭いのかなって思うようになって」
あの廊下側にいる化け物は、そんな女子たちを現しているみたいだった。
「ええ、そんなことないのに」
ってキヨさんは言ってくれたけど、私は気にして、毎日二回お風呂とシャワーを浴びてた。
「でも、どんどん聞こえてくるものがみんな私に言ってるみたいだったから……怖くて……」