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貴方とかくれんぼ[ky]

第21章 聞こえる


 キィンとした音が鳴り止んで、私はゆっくり目を開ける。
 私は部屋の扉の前で座り込んでいたけど、いつもと違う景色にぎょっとした。
 赤い液体。
 また、あの怖い夢の中だ。
 周りは家具が壊れていて、赤い液体で汚れた自分の部屋。そして部屋の角には……。
「な、何これ……」
 見たこともない赤い化け物がそこに座り込んでいた。見た目は人間っぽいけれど、目や口はない。ただ、顔の横にある両耳だけがやたらデカイ。
 私がその耳の大きな化け物に近づこうとしたら、バタン! と音がして素早く振り向いた。
「いってぇ……」
「キヨさん……!」
 キヨさんは、部屋の奥にあるクローゼットから倒れ込むように現れた。キヨさんはクローゼットの中に閉じ込められていたんだろうか?
「大丈夫? キヨさん……」
「ん? ああ、ユメ子ちゃんか! 大丈夫大丈夫、これくらい!」
 私が声を掛けると、キヨさんはすぐに立ち上がって笑ってみせた。私は、今日も怖い夢の中でキヨさんに出会えたことに安心した。
「わ、なんだこいつ」
 そして、キヨさんも両耳の大きな化け物に気がついた。
「分からない……気づいたらそこにいた」
「そうか。なんかよく分かんないけど、近付かない方がいいな」と言ってキヨさんは周りをキョロキョロする。「ここ、またあの夢の中だよな? 俺たち、起きている間に何も対策取ってないよな」
 ドキリとした。そうだった。起きている間と夢の中はリンクしていると分かったのに、何か物を置くとかそういうことをしないままここに来てしまった。
「あの化け物に見つかったら、どうなるの……?」
「それは……」
 私の質問に、キヨさんは答えなかった。私もキヨさんも、あの化け物に見つかったらどうなるか分からない。でもその前に、見つかった場合を考えるのが恐ろしい。
 私がどんどんと不安な気持ちになっていると、キヨさんが安心させるかのようにニカリと笑った。
「大丈夫大丈夫。俺がなんとかする」
 なんとかするとは何をするのか。私はキヨさんの考えていることが分からないまま、キヨさんの後ろについて行くと、昨日と同じ勉強机の下に隠れようと言われた。私は頷き、先に勉強机の下に入ったが、キヨさんは来なかった。
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