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貴方とかくれんぼ[ky]

第20章 耳鳴り


 聞こえないのはその時間だけで、自分でなんとか作ったお粥みたいなもの(ご飯にお湯を掛けて鍋で温めただけだから、お茶漬けみたいなものだったけど)を食べ終わったら、キヨさんとは普通に喋ることが出来た。だから私は、さっき自分に何が起きていたか伝えることにした。
「私、さっきキヨさんの声が聞こえなくて……」
「え、俺の声が?」
 俺の声小さかったかなってキヨさんが言うから、私は首を振った。
「多分、私の耳が変なんだと思う……」
「えっ」
 キヨさんは私の言葉にびっくりした。それから私の耳を見てみたけど、何もなかったみたいで不思議だなぁと言う。お母さんが帰って来たら病院に連れて行ってもらった方がいいと言われたけど、家の外は、まだ怖くて出たくなかった。
「外、出たくない……」
 ボソッて言うと、キヨさんは私の顔を覗き込んで、そっかと背中に手を当てた。
「出たくなった時に病院行ってな。……あ、そういえば、医者が来てくれるサービスみたいなのなかったっけなぁ」
 それからスマホを弄るキヨさんの指先を見て、やっぱり声が聞こえなくなるのは嫌だなぁと思った。キヨさんの声は大きくて頼りになるから、ずっと聞いていたいなと思う。
「キヨさんのゲーム実況見たい」
 と私がまたワガママを言うと、え、とキヨさんはびっくりしてた。だけどキヨさんは全然私に怒らなくて、分かったって言ってくれて。
 そして、部屋に戻って来た時だった。キィンってうるさい音がして、私は耐えられなくなって両耳を抑えて座り込んだ。キヨさんがずっと呼び掛けてくれているのに、うるさくて何も聞こえない……。
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