第16章 再び
「……っ?!」
横の扉が勢いよく開いて私は飛び上がった。そこにはよく知った男性が立っていた。
「ユメ子ちゃん!」
と呼び掛けるその人は、キヨさんだった。
「キヨさん……!」
私は安心して思わずキヨさんに飛びついた。泣きたいというよりは怖かった。また一人になったのかと思って。
「ごめんごめん、怖かったよな」
キヨさんは優しく私の背中をさすってくれた。おかげで私は落ち着いて息をすることが出来た。
その間に、キヨさんが周りの状況を見回して全てを察してくれたみたいだ。
「ここ、夢の中……だよな?」
「多分……」
だとすると、アレも出てくるのでは。私はまた怖くなって身震いをする。キヨさんにはずっとしがみついたままだったが、キヨさんは冷静だった。
「ってことは、また化け物来るよな?」キヨさんはキョロキョロする。「隠れた方が良さそうだが……」
どこに、と見てみても、ありとあらゆる家具がボロボロで半壊状態だ。隠れたところで見つかってしまうかも。そうだ、クローゼットの話をしよう。
「もう一回、クローゼットの中に隠れる?」
「ああ、そうだな」
と私の提案にキヨさんは頷いてクローゼットを振り向いたが、足は動かなかった。どうしたんだろうとキヨさんを見上げると、真剣な眼差しがそこにあった。
「ここのクローゼット、妙に綺麗だな……?」
「え」
確かにそうだとは思ったけど、気にはしていなかった。よく見たらクローゼットの下から赤い液体が零れたように広がっている。そこまでよく観察してみて、私もようやく不気味さを感じた。
「嫌な予感がする……」
「違うところに隠れるか」
そう話し合って、私たちは勉強机の下に隠れることにした。といっても私とキヨさん二人は無理かなと思ったのだけれども、思えばこの机には見たこともない大きなパソコンとモニターがあり、そのパソコンに合わせて勉強机も大きかったのだ。
(ここ、やっぱり私の部屋じゃないのかな……)
と本当の私の部屋を思い出そうとしたが、すぐにはドン! と大きな音がして考えている余裕はなかった。
机の下から、赤い影が見えた。