第2章 キヨさんとの出会い
「はぁ……はぁ……!」
私は飛び起きた。そして、ゆっくりと辺りを見回して、いつもの自分の部屋だとホッとして息を吐く。最近よく見る「赤い影」の夢。刃物を持っていたようにも見えた。毎日怖い夢を見ている私は、既に寝不足だった。
トントン……。
控えめにノックされる音。私はまだ夢を見ているのかと反射的に肩が飛び上がったが、聞こえてきたのは母の声だった。
「ユメ子、今日学校は…………ううん、休むって連絡したから、ゆっくりしててね」
そう言って母が扉から離れる足音が聞こえる。私は返事が出来なかった。
ベットの横に置いたランドセルは、二日前の時間割で止まっていた。荷物は引っ越した時に持って来たダンボール箱に仕舞ったままだ。今日こそは怖い夢を見ないようにしたい。テーブルを見やるとノートパソコンが置いてあり、私はベットから下りた。
「……寝なければ、もう怖い夢も見ない?」
そうだ。ネットで何か見ていたら眠くならなくなってずっと起きていられるはず。私はパソコンを起動し、何を見ようかと探し回っていた時に動画サイトに行き着いた。
「なんだろう、この人……有名な人なのかな」
そこに出てきた「キヨ」という名前のゲーム実況者は、色んな変なゲームやRPGをやっている人だった。声も賑やかでいつの間にか怖い夢なんて見ていたのも忘れて夢中になっていたら昼間はずっと、その人の動画だけで時間が潰れていた。
さすがにお風呂には入ろうと、部屋から出て湯船に浸かり、ボーッとする。だけど時々キヨさんの動画実況を思い出してちょっとクスクスしてしまう。ゲーム実況なんて全然見たことなかったけど、結構面白いんだなぁって。