【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
『話さなくて…いいんですか…?蓬莱さんの気持ち…十亀さんに言わなくていいんですか…?』
「…お前なんかに何がわかる。
いい加減イラつくわ、そういうの…」
蓬莱さんは振り向く事もなく駅の反対方向に向かって歩き出した。
side 蓬莱
一応謝ったし償った。
これでいいだろうと歩き出すと
ガシッ…
左腕を掴まれていることに気付いた。
「………何やってんだ…離せ…」
真っ赤な顔をして俺の腕を必死に掴む遠藤沙良に、低い声で言い放った。
『あの…さっき蓬莱さんは…悪かったって言ってくれましたよね…?』
「…言ったら何だ?」
何でコイツは俺の腕を掴んでる?
あんな怖い思いをさせた奴に…
どうかしてる。
『悪かったと…思ってくれてるならこの宿泊券お返しするので…代わりにお茶してくれませんか…?私と…』
「…は?」
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何で俺がお前なんかと…と腕を振り払って歩き出しても、また掴まれ…振り払っては掴まれ…
「てめぇ…いい加減にしねぇとマジでぶっ飛ばすぞ…」
怒鳴り声を上げて凄むと、近くにいた連中がヒソヒソと話しだした。
「何あれ…こわー…」
「痴話喧嘩…?女の子可哀想ー…」
遠藤沙良はというと、相変わらず赤い顔をして、けれど何かを覚悟したような、異様な程真剣な眼差しをしていた。
"俺がお前を叩き潰す…"
「…ちっ……クソが…」
何でこんな奴がアイツに見える…
どいつもこいつも…面倒くせぇ奴ばかりだ。
俺は渋々遠藤沙良に着いて行き、駅の中の喫茶店に入った。
「初めて入ったわ…こんな古くさい店…
美味いんだろうな?」
『私も初めて入りました…趣がありますね…』
緊張しているのか声は震えている。
コイツの意図が全く読めない。
何でコイツは俺をこんな所に引っ張ってきた…
一息ついて注文を終えると、遠藤沙良は口を開いた。
『蓬莱さん…十亀さんに…
ラートルの総長になってほしかったんですか?』
「…っ何だクソ…条の野郎…
そんな大事な話…お前にしたのかよ…マジでムカつく…」
『……っすみません…』
「別に………」
条にとったら俺の話なんざその程度のモンだってこと。
今更だった…