【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
『…………』
俺が怒りだしたからか、遠藤沙良は急に黙った。
「続けろよ。他に条は何て言ってた?」
『…蓬莱さんは強いって…
ケンカのセンスがあったんだって…言ってました…』
「…ふーん。」
『自分が他のチームに入ったから、何度も自分を賭けて抗争してるって…』
「………」
『違ってたらごめんなさい…
蓬莱さんは…十亀さんに認められたくて…
私を…襲ったんですか?』
「……ちょっと違う。てか、お前に話したくない。これは俺の問題だ。お前なんかに話してたまるか…」
そう言うと、遠藤沙良は目を見開いた。
『…そうですよね…
大事な話は…ご本人に直接話してください。』
「……?」
振り向くと
「あれぇ…?
間違いかと思ったらホントにここだったんだぁ…」
疲れたぁ、改札から走ってきたんだよぉ、と笑いながら話す大柄な男。
髪を切り、似合っていなかったサングラスもやめ、雰囲気の変わったその男は、遠藤沙良の前だからか、以前より更に目が垂れている。
「…何でいんだ……条…」
驚きを隠したくて目をそらす。
「ん…?あぁ。ジャジャーン、GPSだよ。
沙良ちゃんの防犯ブザーに俺の連絡先も登録しておいたの。」
『ごめんなさいっ…急に…
蓬莱さんに会ったらすぐに鳴らせって言葉を思い出して…』
そういえば先ほどコイツはスカートの中に手を入れていた。
「はっ…仲良しってか。
何だ条?狙ってんのか?この女のこと。」
鼻で笑うと、条は続けた。
「快人…何で沙良ちゃんにまた近づいてるの?
今度は何の用?」
ゾワリとした…
目の据わった条にたじろいだ。
『…っ…十亀さん…蓬莱さんは私に謝りに来てくれたんです。それから……アメリカに行かれるって…』
「……そうなの?」
「さぁな…お前にはどうでもいい事だろ…」
どれだけお前にこだわってきたと思ってる。
お前の世界に、どうせ俺はいない…
お前に目には、俺なんか今後も映らない…
「沙良ちゃん…ありがとう。
快人…少し話せる?」
遠藤沙良は頷くと、そっとその場から立ち去り、喫茶店を出ていった。