【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第5章 高架の向こう側
「…そんなんじゃないよ。けど、フラフラはぐらかしてないで、俺の思いをしっかり伝えてたら、快人はちゃんとわかってくれたんじゃないかな、って…そういう後悔ならあるかな。」
そろそろ行くね、と立ち上がると俺は梅宮に言った。
「沙良ちゃん、面白い子だね。」
その言葉に梅宮は目を見開いた。
「あぁ…色々巻き込んじまって…
全然会えてないけど、元気だったか?」
俺は少し考えてから言った。
「…元気だよ。一人で勝手にワタワタして、可愛いよね。風鈴の皆の事も気にしてた。早く普通に会えるようになるといいねぇ…」
「あぁ……十亀、ありがとな。」
梅宮は立ち上がり、そのまま入り口に向かった。
「いいえ…借りは返したからね。」
「…ふっ…借りはこの間返してくれたろ…」
少し前の、最強の元風鈴とやらの戦いを思い出す。
あれはなかなか骨が折れたな…と苦笑いした。
「あぁー、そっか。…じゃあむしろぉ、俺が貸し一なのかな。」
「…お前コーヒー飲んだだろ。」
あ…思い出してカウンターの女の子に声をかける。
「ご馳走さまでしたぁ。
コーヒー、美味しかったよ。」
お金いいのかな?と言うと、俺に任せろと梅宮は言った。手を振って店を出ると、梅宮も手を上げて見送ってくれた。
また来るね、商店街に。
俺は遠藤酒店を通り過ぎると、自分のシマに向かって歩き出した。
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side 沙良
『………何で……ここに…』
学校が終わり、最寄り駅を目指して歩いていると、会った事のある人物に遭遇し、驚いた。
「久しぶりだな…駅までちょっと顔貸せよ。」
そこには
2週間ぶりに見る
蓬莱さんの姿があった。
『…っ……』
防犯ブザーを鳴らそうとポケットに手を入れると…
「悪かった…」
蓬莱さんはそう言って頭を下げた。
『ぇ………?』
「…自分の目的の為に、アンタを利用した。
色々…悪かったと思ってる。」
『………』
見たところ蓬莱さんは一人だ。
相変わらず真っ黒なコーデだが、黒のパンツはダメージがあり、上着もフードの形が特殊で縦に入った白のラインもお洒落だった。
マスクは顎まで下げられていて、下校する女の子達が小声でキャーキャーと騒ぎ始めた。