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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第5章 高架の向こう側



「はぁ?じゃないでしょ。手ぇ出したか出してないか聞いてんだけど…うん、うん…出したんだね。」

終始ニコニコする十亀さん。


もしかして…

あの場にいたラートルの人……?


ラートルは十亀さんの知り合いだった、って事……?
電話の相手は誰で、十亀さんは何を話そうとしているのだろう…?

頭が追いついていかない。


「そっか。じゃあもうさ…」

急に真顔で私を見つめる十亀さん。




「二度としないで。」




『…っ……』

背筋がゾクリとした。
元々低い十亀さんの声が更に低くなり、凄むような威圧感と据わった目に、動けなくなる。

十亀さんは机を見つめて続けた。

「…友達なんだ。沙良ちゃんにはもう指一本触れないでほしい。頼むよ快人。」


相手は何て言うのだろう…

思わず息を呑んだ。


「え………そうなの?」

拍子抜けしたように十亀さんは目を見開き、一言、二言交わすと電話を切った。

『あの………』

「快人…蓬莱快人はさ、中学の時の友達なんだぁ。」


ドクン…

蓬莱の名前が耳に届くと、体が少し震えた。

「沙良ちゃんに手を出さないで、ってお願いしたら何かね…」

スマホをしまい、机の上で腕組みをする十亀さん。


「梅宮が快人の所に行って、同じ事言ったらしい…」

『っ……梅君…が?』

「うん…おとといかな?梅宮に返事はしなかったみたいだけど、俺がお願いしたら二つ返事だったよ。」

ニコリと笑い、ピースサインをする十亀さん。

『っ…本……当ですか?』

信じられなかった。
2週間も悩んできた事がこんなにも簡単に解決するものなのだろうか…

梅君が蓬莱の所に行ってくれたのも、全然知らなかった…

そもそも…
なぜ十亀さんは、ついさっき会ったばかりの自分なんかの為に蓬莱に連絡してくれたのだろう……

「信じられない?」

クスクスと笑う十亀さんに向かって首を振る。

『いえ……信じられないというか…
何で十亀さんがそこまでしてくださるのか…わからなくて…』


「…話聞いたらさ……そうしたくなったんだよね…」

何でだろうね、と笑う十亀さんの顔は、今日見た中で一番寂しそうだった。

『大事な…お友達なんですか?』

「…ん?」
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