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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第5章 高架の向こう側



『蓬莱…さんて、十亀さんの大切な友達なのかなって…思って……』

「………」


『っ…ごめんなさい。わかったような事…』

勢いよく頭を下げた。
最近の自分は以前より調子に乗って、人のことに簡単に踏み込んでしまう。
それで友達を傷つけてきたはずなのに…

俯きながら、ぎゅっと目を瞑る。

「…謝らないでよ。
沙良ちゃん、送っていってもいいかな?さっきの事もあるし、心配だからさ。」

そう言うと十亀さんは、自転車をひいて歩き出した。

『すみません…あのっ…高架を抜けた所までで大丈夫なので…』

「いや…
ちょっと商店街の方に、俺の用事があるんだぁ。」


ふと、前カゴの中の桶が目に止まった。

『あっ、お風呂…行こうとしてたんですよね?
すみません、ほんとに…遅くなってしまって…』

「いいよぉ。銭湯って、12時くらいまでやってるんだよ?沙良ちゃんは銭湯、行ったことある?」

『ないです…行ってみたいなぁ、とはずっと思ってて。』

「行く?一緒に。」

『え……?』


優しい眼差しで私を見つめる十亀さん。
顔に血液が集中するのがわかった。

『いっ…一緒にですか…!?それは…ちょっと…心の準備がっ…』

急に何を言い出すのかと頭が真っ白になり、しどろもどろに返答してしまった。

「あっははは。別に一緒に入るわけじゃないじゃない。沙良ちゃんて面白いよね。」


面白い…?私が?
初めて言われた言葉だった。

『…確かに…一緒に入るわけじゃないのに、何で変な事考えちゃったのかな…』

「変な事考えたんだ。」

『っ…考えてません…』

「ははっ、まぁいいや…」

自分で言ったじゃない、と笑う十亀さん。


この感じ…
さっきお店でも感じたこと。

十亀さんは、包み込むように温かい雰囲気を持っていて、多分年上…の余裕が何だか…



梅君に似ているんだ。



「沙良ちゃん…快人の事、不快な思いさせて…ごめんね。体につけられた痕っていうのは、もう消えたの?」

『はい、もう…残っていません。』

「よかった…………快人と俺はさ…」


そう言うと、十亀さんはポツリ、ポツリと話しだした。

中学1年生の時、蓬莱さんは端麗な容姿から直ぐに上級生の不良グループに目をつけられ、袋叩きにされた。

それを救ったのが十亀さんだった。
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