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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第5章 高架の向こう側



「沙良ちゃん、少しだけ店でご飯食べない?時間あれば。」

大勢に囲まれ、十亀さんがニッコリと言った。

『あ……父が心配しているので…配達も終わりましたし、もう行きます。』

「そっかぁー…じゃあ一品だけ付き合ってよ?ここの手羽餃子凄く美味しいんだぁ。」


十亀さんはどうぞどうぞ、と私をテーブル席に座らせる。

『あのっ…早く帰らないと本当に父が心配するんです。早く帰ってメッセージを送らないと、心配してここに来てしまうかもしれないので…』

嘘ではなかった。
それくらい、自分は今まだ解決していない問題の渦中にいる。

「え…沙良ちゃん、高校生だよね?お父さん、心配症なかんじ?」

『いえ…そういうんじゃないんですが…』

「………」

『ちょっと…色々あって…』

「沙良ちゃん、良かったら話聞かせて?何かあったの?俺には力になれないかなぁ?」


ラートルの事は、十亀さんも知っているかもしれない。
けれど…言ってどうにかなる問題でもないと思った。

『ありがとうございます…十亀さんは…優しいですね。
けど…大丈夫です。』

「さっき助けたお礼だと思ってさぁ、話すだけ話してみてよ。沙良ちゃんが元気ない事と、何か関係あるのかな。」

お礼に話を聞くって…
何のお礼にもなっていない。
梅君といい、十亀さんといい、優しすぎる人ばかりだ。


『…じゃあ………』

話さなければ帰れないような気がして、一から全て話した。
十亀さんは頷いたり俯いたりし、黙って話を聞いてくれた。

「…終わり?」

『はい…』

ありがとうございました、もう行きます、と席を立とうとすると

「沙良ちゃん、俺にその件任せてくれない?」

十亀さんはまたニッコリと笑った。

『任せる……?』

「うん。」

そう言うと、スマホを取り出して電話をかけ始めた。
しばらく待つと、相手に繋がったようだった。


「あー…快人?俺だよ、条。元気?うん、うん…」


誰にかけているのだろう…
なぜ今電話…

「うん、ははっ、うんうん。それでさ、本題なんだけど…お前、遠藤沙良ちゃんに手ぇ出した?」



ドクン…



え……
誰?十亀さんは誰に電話をかけているのだろう…

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