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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第5章 高架の向こう側



あれから梶君とはメッセージでやり取りはしても、核心に迫る話はしていなかった。

"考えてるから…"

『………』

梶君からいつまでも話がない事に、安心している自分がいるのも事実だった。


梶君の事は好きだ。


あの日温かい言葉をかけてくれて、ずっと心の傷になっていた痣を受け入れてくれた梶君。
もう二度と、そんな人には出会えないのではないか。

そう思った…


けれど何度考えても、その思いが異性としてのものなのか、感謝からくるものなのか、答えが出ずにいる…

梶君は異性として真剣に自分と向き合ってくれたのに、自分は流されるようにそれに応えてしまったのだ。

お互いに割り切った関係だったわけではなかった。
それが…自分の心を重くしていた。

梶君からアクションがない事に対して、どこか安心している自分がいるのが情けなくて…


ポトスにも行かないまま、2週間が過ぎていた。
皆元気かな。ことはちゃんも…

いつまでこうして隠れるように生活するのだろう…
いい加減、ストレスで体は限界にきていた。

蓬莱達がいつ来るかもわからない。
もう来ないかもしれない…
ならこうしている意味もない。

『…外の空気……おいしい…』

昼に学校から帰ると、外出は禁止になっていた為、夜空を見上げることすらなかった。


商店街を抜けて飲み屋街へ入る途中の高架で、噂に聞いていた獅子頭連の獅子の絵が目に入る。

一度ぶつかったことのある獅子頭連とは今年に入ってからまたぶつかり…
色々あって今は友達になったのだと聞いていた。
梅君はひどい怪我を負い、かなり心配した事を思い出した。


『お店は…この近く。』

スマホの地図を確認しながら自転車をひいて高架を抜けた時…


「お嬢ちゃん、いいモン持ってるねぇ…」

急に二人組の男が寄ってきた。

『…っ……』

「これ、日本酒っしょ?中坊がこんなん持ってたらダメじゃなーい、優しいお兄さんがもらってあげましょうねー。」

がははっ、と笑いながらもう一人がお酒に手をかけた。

『…っこれは…お店の商品なので…触らないでください…』

「あー?聞こえねぇなぁ?え?何?お嬢ちゃんいい度胸じゃん。…俺らと遊ぶ?」


もう…ダメだ…


肩を触られそうになり、持っていたブザーに指をかけたその時…


「なぁーにしてるのぉ?その子ぉ、俺の連れ。」
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