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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第5章 高架の向こう側



梶は驚く様子もなく、私が出した飴置き用の小皿に飴を置くと、ゆっくりと口を開いた。

「…そうか。」

「えぇ。昨日はごめんね、お店にいたから聞こえちゃった。
聞き間違いじゃなかったら…沙良ちゃんと…
昨日そういうことかあったの?」

「…あぁ」

私を見つめて返事をする梶。

「付き合ってないって言ってたけど…
梶の気持ちは本気なんだよね?」


沙良ちゃんはもう、私にとっても大切な友達だ。
友達が傷つく姿は絶対に見たくない。

余計なお世話だとは思ったけれど、はっきりと聞いておきたかった。

「…アイツが好きな気持ちは本当だ。けど…」

梶はカウンターに乗せた手を、ぎゅっと握った。

「俺が風鈴にいる限り、アイツを危険に晒す。
胸を張って一緒にいてくれとは…言えねぇ。」


「…Snakesの話…聞いたの?」

梶は驚いたように私を見た。

「情報早ぇな…」

「ふふっ…ことはちゃんの情報網ナメないでね。
確か梶達とも前にぶつかったよね。皆、凄い怪我だったからよく覚えてるわ。」

お皿を拭きながら俯く。

「…沙良ちゃんが巻き込まれるの、怖い?」

「当たり前だ。いつも一緒にいられるわけじゃねぇから…」

梶の気持ちを聞いて安心した。


「…梶、梅の気持ち…わかった?」

「…総代?」

「梅はあんなかんじだから、元々結構モテたのよ。
中学の時とか、普通に何人か彼女もいたし。中学生なんて、言うて子供だから、彼女への報復なんか怖くなかったと思う。
けど高校に入って梅は風鈴をどんどん大きくしたし、統一していった。」

思い出すように遠くを見つめて言った。


「それに比例するように逆恨みや報復を企む連中も増えて…ヤバい連中も増えていった。中には警察に捕まることも厭わないような奴らもいて…
梅は彼女をつくらなくなった。

きっと怖いのよ…大切な人を傷つけるのが…」


一番自分を傷つけているのは…誰なの?

一番傷ついてるのは誰よ…?梅……


「総代の事は……」

梶が言いたいことはすぐにわかった。

「ふふっ、恋愛対象じゃないからね。
昔から、私達は兄妹みたいな関係。お互いその気持ちは一切変わってないわ。」

だからこそ私は思う。

梅には幸せになってほしい、って。

「難しいわよね…人の思いって。」

「…………」
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