【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第1章 引っ越し
『少しだけ…オムライスは好きで、お店の食べ比べとかよくしていました。
このオムライス、地元の大好きなオムライス屋さんのとよく似ていて、凄く美味しいです…』
「気に入ってもらえたなら良かった。」
『…っ……すみません。
他のお店と比べるなんて私…失礼な事をっ…』
「え、やだ全然気にしないで?ていうか今褒めてくれたじゃない。嬉しいわ。地元って今言ったけど、どこなの?」
『あ…さきの町っていう、小さい町です。
実は今日引っ越してきたばかりで…』
「えっ、この町に?家はどの辺?」
『ここからすぐの…遠藤酒店です。
父が祖父の店を継ぐことになって…近々また開くと思います。』
「えぇっ、遠藤のじいじのお孫さん?!
全然似てないからわからなかった。そうなんだ。」
「何なに?遠藤さんちのお孫さん?」
「本当だ、全然似てないね。」
「こんなに綺麗なお孫さんがいたんだねぇ。」
食事中の人達が、あっという間に私の周りに集まってしまった。
『あ……えっと……』
こんな事は初めてで、緊張して目が回りそうだ。
「はいはい、皆落ち着いて。席について。まだこの子、食事中よ。」
店員さんの一言で、皆蜘蛛の子を散らすように席に戻っていった。
「遠藤のじいじはよくお店にも来てくれて、町内会のお祭りなんかでも皆お世話になったわ。
亡くなった時は信じられなくて…
あんな元気な人が、って…」
店員さんは涙ぐみながら、コーヒーの準備を始めた。
脳梗塞で、あっという間に亡くなったおじいちゃん。
あまりに突然の事で、身内である私達も驚いたくらいだ。
普段から親密にしていた人達にとったら本当に信じられない事だっただろう。
おじいちゃんは…慕われていたんだ。
胸の中がじわじわと温かくなっていった。
「私は橘ことは。16歳の高1よ。あなたは?」
『…遠藤…沙良です。16歳です。…ぇ……あれ?』
「『えぇっ…………!?』」
「年下だと思った。」『年上かと思いました。』
『…っ…ごめんなさい。大人っぽくてっ…美人すぎて…』
「ははっ、全然気にしないで。
よく言われるの、老けてるって。
あなたはキレイだけど、幼く見える。羨ましいわ。」
『いえそんな…女性に年上かと思ったなんて失礼な事…
本当に…ごめんなさい…』