【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第1章 引っ越し
「喫茶…ポトス……」
上を見上げると、2階にも鉢が張り出し、植物が飾ってあって可愛らしい。
『お昼…ここで食べよう。』
中に入ると落ち着いた店内にお年寄りの御夫婦、家族連れなど数組が座っていた。
席に目をやると、美味しそうな食事が目に入った。
サンドウィッチ…カラフルで凄く綺麗。パスタもいいな。
自然と頬がほころぶ。
『…っ……』
瞬間、目に飛び込んできた黄色くてフワフワとした食べ物。
『オムライスだ…』
店に入ってから立ったままでいる私に、店員さんが声をかけてくれた。
「いらっしゃい。」
ハキハキとした、美人な店員さんだ。
緑のエプロンが似合っていてカッコいい。
「ごめんね、カウンターでもいい?」
『あ、はい……全然。』
「良かった、どうぞ。」
案内された席は店員さんの真ん前の席。
『……………』
ドク……ドクン…
心臓がうるさく鳴り始める。
まずい…今更換えて欲しいとは言えない。
ゆっくりと席に座り、話しかけられないよう、スマホを弄り始めた。
「オーダー決まったら言ってね。」
店員さんはお水をグラスに注いでカウンターに置くと、出来上がったサンドウィッチを運んでいった。
オーダーはもう、メニューを見なくても決まっている。
店員さんを目で追いながら思った。
近くで見ると本当に綺麗な人。
どうしよう…
話さなくても緊張してしまう。
店員さんが戻ってきた所で、おずおずと声をかける。
『あ…あの……』
「決まった?」
『あ、オムライス…お願いします。』
「はぁい、ちょっと待ってね。」
手際よく材料を手に取り、フライパンを振る店員さん。
作り方…見たい。けどジロジロ見て、万が一目があっても困る。ここはスマホだ…
「はい、どうぞ。」
あっという間に出てきたオムライスはフワフワとしていて、完璧な形をしている。
『わぁ…美味しそう…』
「ふふっ、ありがとう。口に合うといいけど。」
早速左端からスプーンですくって一口食べてみる。
『…っ……美味しい…』
「良かった。ちょっとした隠し味を入れてるんだけど、わかる?」
『……コクがあるなって思って……
オイスターソース…とかですか?』
「お、正解。料理するの?」