【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
思えばずっと自分の気持ちがわからず、モヤモヤとしていた。
梅宮さんや他の風鈴の連中と話す時に、沙良の笑顔が増えた事。
男共が嬉しそうに沙良の話をする事。
何となくイライラするのがわかった。新しい飴の袋を開く間隔が、一気に短くなったから。
箱買いの飴の量も増え、ヘッドフォンの音量は更に上がった。
過去を知っているからこそ、今の姿を喜ばしく思うはずなのに、なぜか俺の心はいつもザワついていた。
それに加えて、あの日の蓬莱の行為。
沙良の笑顔をまた奪うのでは…
また笑わない沙良に戻ってしまうのでは…
本当はボコボコにして沙良の写真を消させるのが正しかったのかもしれない。それ位、頭には血がのぼっていた。
だが蚊の鳴くような声で俺を呼ぶ沙良の声を聞いた時、沙良を危険な目に遇わせるかもしれないという恐怖が一気に俺を襲い、蓬莱達の言葉は耳に入らなくなっていた。
自分の中で沙良の存在が大きくなっていた事を自覚したのはこの一週間、全く会わなくなってから。
「沙良…好きだ。」
気付いたら俺はそう呟き、沙良の口内に舌を這わせていた。
side 沙良
『んっ……梶…君…』
薄く目を開けると、伏せられた長い睫毛と、スッと通った鼻筋が見えた。
瞼が開くと、深いグレーの瞳と目が合い、ドキリとする。
『…っ……』
後頭部を押さえる手の力は益々強くなり、同時に舌の動きも激しくなった。
『んっ…ふっ……』
柔らかくて温かいものがピタリと隙間なく口内を動き回る。
生まれて初めての感覚で、どうしたらいいかわからず梶君の服をつかみ、必死に応えた。
飴の甘さからか、舌の柔らかさからか、頭がクラクラとしてくると、お腹の下が疼き始めた。
『んっ…梶君…ぃゃっ…』
心臓が煩く鳴り、梶君の胸をそっと押した。
「…沙良……」
梶君の、見たこともないような余裕のない艶めいた表情に、目を逸らした。
『梶君…どうしたんですか……?…からかわないでください…』
"沙良…好きだ。"
勘違いでなければそう聞こえた。