【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
「自分と同じ人間に寄り添ったり…
気持ちを理解したりする事はできるようになったと思う。」
沙良から視線を逸らさずに言った。
「だからお前にこの痣があるのには、何が意味があると俺は思う。今はそうじゃなくても…いつかそう思える日がくるといいな。」
side 沙良
見たこともない優しい眼差しの梶君に見つめられ、心臓がドクリと高鳴った。
「けど大人になれば、自分でその痣をどうするかは選べる。
母親の思いは母親のもので、お前のものじゃない…
お前が後悔しない選択をすればいい。」
『………はい…』
梶君とは元々、滅多に話すことはなかった。
こんなに話してくれただけでも驚いてしまうのに、私を理解しようと、寄り添おうとしてくれた。
だから途中からは、嬉しくて涙が止まらなくなった。
そう考えていたら、また涙で視界がぼやけてしまう。
『……っ…』
「…どうした?」
『痣を見せてくれなんて言われたの初めてで…
びっくりしました…』
「悪い…」
私を見つめる梶君を見つめ、首を振った。
『お父さん以外の男の人に触れられる事なんて正直…もう一生ないと思ってたので…何か…変な事言ってしまいますが…嬉しいって思ってしまって…』
side 梶
涙を流しながら微笑む沙良の顔を見て、何かが弾けた。
俺は
沙良の涙を拭い、顔を近づけると
そっと、唇を重ねていた。
『ぇ……』
怒ったり泣きだしたりするのではなく、ポカンと目を見開く沙良。
「悪い…お前の顔見てたら……我慢できなかった。」
『…今……』
「したかったからした。嫌だったら…悪かった。」
真顔で言う俺の言葉に、沙良はふっ、と笑った。
『…したかったからした、ってそれ…
私じゃなかったら怒られてるやつですよ。』
「お前は怒らないのか。」
『…だって…嫌じゃ……なかったので…』
「そうか。なら…」
顔を赤らめて答える沙良に、もう限界だった。
沙良の後頭部に手を添え、俺は再び唇を重ねた。