【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
『…っ……ふっ……』
「…………」
『…っ…ごめんなさ…』
溢れる涙を、必死に服の袖でゴシゴシと拭いた。
梶君はその手をそっと掴み、口を開いた。
「目が腫れる…」
『…ふっ…ぅっ…』
止まらなかった。
色々な事を思い出し、せきを切ったように感情が溢れ出した。
「沙良、もし嫌じゃないなら…
痣…見せてくれ。」
『…っ……』
その言葉にビクリと震えた。けれど…
嫌だとは思わなかった。
七分袖のパフスリーブを脇の下あたりまで捲り、梶君に痣を見せた。
『っく…ひっ…く……』
酷い顔になっていそうだったけれど、どうでも良かった。
梶君は私の腕を優しく掴むと、じっと痣を見つめた。
「…痛みはあるのか。」
『……な…い…です…』
ブンブンと首を振った。
「…触っても大丈夫か。」
『っ……』
"伝染る伝染るっ"
"キッモ…怖いわ…"
反射的に、バッと腕を引っ込めた。
『っ…う…伝染る…から…』
ポロポロと涙が流れる。頬が熱い。
梶くんが真剣な顔つきになり、再び優しく腕を掴んだ。
「…伝染らない。病気じゃないだろ…」
『っなんで…触りたいの?
気持ち悪く…ないんですか…?怖く…ないんですか…?』
「………人間は…」
梶君は痣にそっと触れた。
『…っ……』
「自分と違うものに勝手に名前つけてレッテル貼って、異物と決めつける。そうする事で…安心する生き物だから…」
side 梶
俺もそうだったからわかる。
"何…?アレ?まるで獣ね。"
「知らないから、知ろうともしないから怖がる…
そんな奴等は放っておけばいい。」
『……ぐすっ……ふっ…』
俺は沙良の目尻から流れる涙をそっと掬った。
「そうは言っても言われた方はずっと過去の傷に引っ張られながら生きてんのに…不公平だよな。」
『………ひっ…く…』
まだまだ涙が止まりそうにない沙良を見つめて言った。
「俺は昔、自分の事がキライだった。
けど…俺を受け入れてくれた周りの人間のお陰で自分をコントロールできるようになって…
自分がこうなのには、何か意味があるんじゃないかと思うようになった。」
『…意…味……?』