【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
『梶君、もし迷惑じゃなければ…少し私の話をしてもいいですか?』
「…いいのか?」
『はい…』
言わなくても良いことを正直に話してくれた梶くんになら、話してもいいと思った。
痣のことも、母のことも知っていて、おじいちゃんとも親しくしていた梶君なら…
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20分は経っただろうか。
私がポツリ、ポツリと話す度に梶君は相槌をうったり、チラチラとこちらを伺ったりしてくれた。
時折声を詰まらせると
「…ゆっくりでいい。」
とか
「言わなくてもいい。」
と言いながらティッシュを取ってくれた。
誰かにこの話をしたのは初めてだった。
生れつきの痣のこと。
母は私の痣を、私が私である大事な印だと言ったこと。
痣が私を守り、私を強くしてくれると言ったこと。
私自身もそう思っていた。
けれどそれは中学年まで…
高学年になると、痣のことを知る同級生からの陰口が始まり、ついにはイジメが始まった。
掃除の時、あからさまに最後まで運ばれることのなかった机。
誰もペアになってくれない体育の授業。
リレー発表も、いつも最後の一人まで残った。
先生は気付いていなかったのだろうか…
その頃母が体調を崩して入院し、心配させたくなくて母と父の前では無理に明るく務めては学校で吐いていた。
私の体はとっくに悲鳴をあげて壊れていたのだ。
6年生で母が亡くなり、教室に入らなくなった。
相談室に通い、学習をした。先生は優しかった。
同じ町の中ではあったけれど中学で引っ越しをし、新しい友達もできた。
けれど小学校からの事もあり…
友達とうまく話せないことが続いた。
距離を置いてしまい、これではマズイと逆に無理に近づいてみたり…
そうこうしているうちに、今度はこう言われるようになった。
"沙良って失礼な事言うよね。ウザい。"
もう…
どうしたら良いかわからなかった。
全て痣のせいにしたかった。
けれど痣を否定したら亡くなった母の事も否定するのではないか…
上手くいかないのはただ、自分が悪いせいではないか…
再び学校に行ったり行かなかったりが続いた。
やる事がないから勉強だけはした。
高校に入っても明るくは出来なかった。
今も…ビクビクしながら高校生活を過ごしている。