【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
少し間が空くと、梶くんは口を開いた。
「沙良…お前に謝りたいことがある。」
『謝りたい…こと……?』
何だろう、見当もつかない。
梶君は胡座をかいたまま俯くと、意を決したように顔を上げ、話し始めた。
「あの日…お前がラートルに連れ去られた時、ことはさんがお前の体を確認したろ。
その時お前はちょっと…怯んだっつうか…抵抗していたように聞こえた…」
よく覚えている。
ことはちゃんは悪気なく、制服のブラウスを脱がせようとしたため、驚いて声を上げてしまったのだ。
「お前が叫んだからその…無意識に…
振り向いちまったんだ。」
そうだったんだ。
『…腕の痣が見えたって事ですか?』
冷静に聞くことができた。
「……そうだ。悪い…」
申し訳なさそうに目を逸らす梶君。
『梶君は…本当に優しいですよね。
そんなの言わなければ、全然わからない事なのに。』
にっこりと微笑んだ。
『生れつきあるんです、この痣。
結構赤くて目立つから、火傷とか皮膚が腐ってるとか当たり前に言われて。普通の皮膚と全然違いますもんね。…怖くて当たり前だと思います。』
左腕を押さえながら言った。
「………悪かった。」
頭を下げる梶君。
『…謝らないでください。
代わりに1つ聞いてもいいですか?』
「………?」
『コレを見た時…正直どう思いました?』
自分でも驚く程、冷静に喋れていた。
純粋に、梶君がどう思ったか知りたかった。
「…………」
俯いたまま黙る梶君。
梶君は優しいから、きっと何て言ったら私が傷つかないか考えてくれてるんだろうな…
そう思ったから
梶君が私を見て口を開いた時発した言葉に、思わず固まってしまった。
「…小5のお前から笑顔を奪ったのは…
これだったのかもしれない、って………思った…」
『え………』
小5の私…
何で…
心臓の音が煩い。
「昔…遠藤さん…保さんちのタンスの上に、お前の家族の写真と…
お前が一人で写ってる写真が飾ってあった。
小4の頃の…笑顔で写るお前の写真。ワシに似てなくて可愛いだろ、って遠藤さん言ってた…
けど小5からお前は笑わなくなって…小6で母親が、って話も…聞いてた。」
『母の事も…知ってたんですね。』
「…………」