【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
本当に綺麗に整えられたお部屋。
テレビ、漫画の並んだ棚、勉強机、ローテーブル…
必要な物が整然と並んでいて気持ちがいい。
布団は…お休みだから出しっぱなしなのかな…
梶君は、何で家に呼んでくれたんだろう…
カチャカチャというガラスの音がキッチンから聞こえ、ふと考えてみた。
家にいても色々な事を考えてしまうから、誰かと話がしたかった。
だから住所の書かれたメモを頼りに、お父さんが持っていくと言っていた飲み物を勝手に持ってきたのだ。
梶君はそんな私に気付いたのかな…?
ガタっ
コップを左手に持ち、大きなペットボトルを右脇に一本抱え、右手に一本持った梶君が入ってきた。
ドン
「…どっち飲む?」
『あ…えっと…お茶で』
頷いて、コポコポとお茶をついでくれる梶君。
『ありがとうございます。梶君は…飲まないんですか?』
「……あ。」
黙って再び自分のコップを取りに行き、戻ってきた梶君を見て笑ってしまった。
『ふふっ…梶君は…
いつも周りの事を優先してくれるんですよね。』
キール戦の事、最強と言われた元風鈴との戦いの事、少し前のケンカの事は風鈴のメンバーから詳しく聞いている。
梶君自身に自覚はないみたいだけれど、皆、梶君を深く信頼しているのがわかった。
「お前だってそうだろ。」
『え……?』
意外な言葉に手が止まった。
「お前だって…何の得にもならないのに俺達の勉強見てくれたり、町の落書き消してくれたりしてるだろ…」
『あ、それは…』
梅君との約束だったから。
そう言いかけてやめた。
『…私はズルいんです。』
「……?」
『風鈴の皆さんが私を少しでも頼ってくれてるのがわかるから…嬉しくてポトスに行くの楽しみなだけで…
学校の子達には何も頼られていないし、求められていないから自分からも敢えて関わらないですし…』
そう、楽な道を選択してるだけ…
「頼られて、それに応えるためにお前はお前のやれる事をしてくれてる。それの何がズルいんだ。」
真っ直ぐに私を見つめる瞳。
『……っ…』
「風鈴の連中はお前に感謝してる。……俺も。」
『……ありがとう…ございます。』
心の中が温かくなった。
無口な梶くんからの言葉は、熱を持ったようにじわじわと胸の中に広がり、くすぐったかった。