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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第4章 ※初めて



そう言うと、おずおずと紙袋を差し出した。


「俺に…?」

驚いた俺は沙良の顔を見つめた。


『はい、正確に言うと梶君と梶君のお母さんに。』

中身はビールとジュースだと言って袋の中を見せる沙良。


確かに母さんはよく遠藤酒店でワインを買ったりビールを買ったりしている。
親子で感謝してるので、これは父から梶君のお母さんと梶君に、と袋を渡す手を伸ばした。


「…悪いな。てか、お前こんな所に来ていいのかよ。遠藤さんは知ってるのか?」

俺の質問に分かりやすく目が泳ぎだす沙良。


『…お父さんは研修で、県外に泊まりに行ってるんです。家から出るなって言われてたんですが、流石にその生活も苦しくなって…出てきちゃいました。お願いします、お父さんには内緒にしてください。』

そう言うと、沙良は軽く頭を下げた。


遠藤さんは酒屋になったばかりだ。
研修に行ったり、蔵元に直接出向いたりして酒の味を知ることが、客にとってプラスになるのだと、以前聞いたことがあった。

「…わかった、言わない。」

ありがとな、と紙袋を受け取った。


「沙良…」


俺は

どうしても謝っておきたい事が1つあった。


『…?…はい。』

帰ろうと背を向けた瞬間に呼び止められ、急いで振り返る沙良。アパートの住人が通り過ぎ、沙良を見ると外に出ていった。


ここで話すのは…


「…俺の家に来てほしい。ちゃんと送ってく。」

『え…いいんですか?』


家に帰っても暇で、と少し笑った沙良の姿に安堵し、一緒に部屋に向かった。









side  沙良

梶君のお宅はスッキリと整えられていて、清潔感があった。

梶君の部屋のローテーブルの上に置いてあった飴の箱が目に入り、思わず笑ってしまう。

『これ、箱買いなんですね。
前から聞こうと思っていたんですが、飴…好きなんですか?』

梶君は箱をじっと見つめて答えてくれた。


「いや…そういうわけじゃない。
別に好きで食ってるわけじゃ…」

私に座るよう促すと、飲み物を取ってくると言って部屋を出ていった。


床に座ると、遠慮がちにぐるりと部屋を見回した。
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