【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
急に全く喋らなくなった私に誰も何も話しかけず、家までゆっくりと送り届けてくれた。
三人共、父が戻るまで付き添ってくれた。
ーー約1週間後ーー
side 梶
家でゲームをやるのにも飽き、早々に切り上げるとスマホを布団の上に放った。
「………」
休日で学校も見回りもないと、こうも暇かと飴を転がす。
一人になった時に考える事といったら決まっていた。
1週間前、沙良がラートルに捕まった事。
配達から帰った遠藤さんは事実を知り、酷くショックを受けた様子だった。遠藤さんは念の為に、沙良と俺達風鈴はしばらく距離を置くようにと決めた。
当然だと思った。
そのしばらくがいつまで続くかわからないが、本当に俺達は沙良に一切会わないまま1週間が過ぎた。
既に生活の一部になっていた勉強も、パタリとやらなくなったし、やろうとも思わなくなった。
"そう、正解です。"
"梶君、飲み込みが早いですね。凄い。"
身近にあったアイツの笑顔や笑い声がなくなり、ぽっかりと穴が空いたような気分だった。
急に環境が変わったせいで調子が出ない、なんて言い訳をしながら、部屋の窓から外を見下ろす。
「…っ……何で…」
ふいに目に飛び込んできた人物。
俺は部屋を飛び出し、家を飛び出すと、その人物目指して全力で走った。
「沙良っ…」
『っ…梶君…お久しぶりです…』
アパートの1階には、紙袋を下げた私服姿の沙良が立っており、俺が近づくと深々と頭を下げた。
「…………」
沙良の姿を見て走ってきた事が急に恥ずかしくなり、言葉が出なくなった。
『…?どこか出かけるんですか?』
当然だ。アパートから降りてきた人間を見て、外に用事がないと思うはずがない。
「いや…別に出かけない。」
『……そうですか…』
沙良は不思議そうに、申し訳なさそうに俺を見た。
少し痩せた。顔が一回り小さくなった気がするし、気になるのは目の下のクマだ。
拳を握り、力を込める。
「お前…ちゃんと食ってるか?寝れてんのか?そもそも…何でこんな所に来たんだ?」
聞きたいことが次々に浮かんでくる。
『…ご飯、食べてます。寝れては…ないかもしれないですが。ここには、梶君に用事があってきました。』