【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第4章 ※初めて
side 沙良
「沙良っ………」
「沙良ちゃんっ……大丈夫!?…」
ぼんやりとした頭で遠くを見つめていると、梅君とことはちゃんの声がして、意識がはっきりとしてきた。
『梅君…ことは…ちゃん…』
「梶っ…ありがとな。沙良大丈夫かっ?怪我は…?」
汗をかきながら私の頭や顔に触れ、顔を覗き込む梅君。
私は黙って首を振った。
走ってきてくれたんだ…
「大きな怪我は…してないと思います。救急車は拒んでて…」
「何言ってんだ!?呼んだ方がいいに決まってるだろ。警察だって…沙良待ってろ、今すぐ…」
「梅、待ってっ…」
ことはちゃんが顔を覗き込んできた。
「沙良ちゃん、ごめんね、ちょっと見るね。あんたらはあっち向いてて。見たら殺す。」
ことはちゃんは梶君のかけてくれた制服を取って体を確認してくれた。
「沙良ちゃん、ごめんね、こんな事聞いて…
お腹から下は触られてない?」
ビクリとしたが、コクンと頷く事はできた。
「…救急車は呼んでほしくないのね?」
また頷いた。
「遠藤さんにはこの事…話してもいい?」
涙が溢れた。
『心配かけたくない…けど…私から話す…』
首にも跡をつけられた。
誤魔化すにも限界があった。
「…首、胸、お腹に複数の跡、あと両手の親指に鬱血痕がある。縛られてたのかな?」
梶くんが頷いた。
「私が見てわかった所はそれくらい。強く殴られたり蹴られたりしたような跡は確認できなかった。だから病院で診てもらうような怪我じゃないかもしれないわ。逆に…」
ことはちゃんは黙った。
「これを人に見せたり説明したりしなきゃいけない事が沙良ちゃんにとって負担になるなら…
慎重になる必要があると思う。」
「…っ……」
梅君は私の前にしゃがみ込み、あろうことが地面に頭をつけた。
『っ…梅くん…』
「ごめん沙良…
一緒にポトスに向かってたらこんな事にはなってなかった…謝って済む事じゃねぇが…ホントにごめんな…」
握った拳が震えている。
『梅くん顔…あげて。
大した事されてないから…
来てくれて…ありがとう。』
そう、実際本当に…大したことはされていないのだ。