【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第3章 遭遇
『っ…私なんて…囮に…ならないと思います…』
「それはどうかな。」
ブチっ…ブチブチ…
『ぇ………』
蓬莱は私の制服のシャツを思い切り左右に引っ張ると、ボタンが四方八方に飛び、コロコロと転がった。
「試そうよ。梅宮が来るか来ないか。」
side 柊
カランカラン
「おう、梅宮。あれ?沙良ちゃんは?」
「………」
心なしか元気のない梅宮。
「どうした?何かあったのか?」
カウンターに座っていた俺の隣にどかりと座ると、梅宮は突っ伏しながら言った。
「俺さ…何かした?」
「ん?急にどうしたの?梅。」
ことはちゃんがタオルで手を拭きながら反応する。
「何か沙良の態度がおかしい。前に一回おかしかった時とはちょっと違うけど…避けられてるように感じる。」
わけがわからん、というように、梅宮は顔を上げ、頭を掻いた。
「そうか?」
ニヤつかないよう、ことはちゃんと目を合わせ、落ち着いて答える。
最近の沙良ちゃんはあからさまに梅宮を意識し、ビクビクとしている。何故そんな態度になっているのかは一目瞭然だ。
「俺にも十分変だぞ。まぁ俺等、沙良ちゃんにまだまだ心開いてもらってないのかもな。」
そんなに落ち込むな、とばかりにポンポンと梅宮の肩を叩いた。
勿論、実際は俺には普通だ。
当たり前だ、意識されていないのだから。
全く、梅宮の鈍感さときたら呆れる。
「えっ、そうなの?柊にも変なんだな。何だ良かったー、安心したわ。」
暗い顔から一変、目尻を下げて満面の笑みになった。
相変わらずのアホさにも呆れる…
ピロン
梅宮のスマホの音が鳴った。
「お、噂をすれば沙良ちゃんか?」
「いや…ん?誰だこれ…」
指先でスマホを操作する梅宮を見ながら、ことはちゃんに出してもらったコーヒーに口をつけようとすると…
ガタッ…ガシャーン…
急に立ち上がった衝撃で椅子が転がり、無表情の梅宮の息は上がっている。ヒュッ、ヒュッと息の音が聞こえ、ただ事ではない、と瞬時に理解した。
「梅…?」
「おいっ…どうした?」
「沙良…」
梅宮は下を向き、携帯の画面を見つめている。
「沙良ちゃんがどうしたんだっ…!?」
梅宮の携帯を覗き込むと、息が止まった。