【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
side 梅宮
"本当にっ…大丈夫なので。"
「………」
今にも泣き出してしまいそうな沙良の顔を思い出しながら、ポトスへと戻ってきた。
カランカラン
「お疲れ、梅宮。沙良ちゃん帰ったか?」
「………」
「おい、梅宮。聞いてんのか、おい。」
「っ…あぁ、ごめん。何だっけ?」
「…なんかあったのか?」
最後はお互い笑い合っていたはずなのに、沙良の急激な変化に全く心当たりのなかった俺は、柊に簡単に事情を説明した。
「ふぅん、なるほど…確かにわからんな、それだけだと。」
「何か傷つけたんなら謝りてぇけど、わからなくてさ…」
グシャリと前髪を掴んだ。
「まぁ…大丈夫ってんなら様子見たらどうだ。とりあえず俺が聞く限り、お前が沙良ちゃんを傷つけた、って事じゃなさそうだけどな。」
「だといいけど…」
「…勘違いって事もあんだろ。気にするな。
しっかし風鈴の連中…大分盛り上がったな。
ことはちゃんは昔から紅一点だったけど、お前の手前、何かそういう対象で見ちゃいけねぇみたいのあったからさ、初めてじゃないか?高校生の女の子があんな風に俺等の中に入ってきたのは。
商店街には他にも女子高校生なんていくらでもいるのに、何で今日沙良ちゃんを迎えに行ったんだ?
しかも何気に梅君とか呼ばせて敬語まで使わせないとか。
何だ?気になってんのか?」
柊の意地悪そうな目つきに、いつもならうるせぇ、と適当に返すんだが…
「そうなのかもな…」
俺の反応に柊は目を見開き、コーヒーに口をつけた。
「アイツさ、初めて会った時からオドオドしてて…
何ていうか、自分自身を認めていないような感じがしたんだよな。
わからんけど、沙良を縛ってる何かがあるんじゃないかと俺は思ってる。
その縛りがあいつを…あいつが"人と関わる事"を拒んでいるように見えるし、他人と深く関わる事を恐れているように見える。そこが…」
「出会った頃の桜に似てるよね、種類は違うけど。」
ことはがコーヒーを持ってきてそう言った。
「…そうだな。何とかしてやりてぇとか偽善めいたもんじゃなくて、アイツが自分の事を価値ある人間だって気付ける何かが必要だな、って思ったんだよ。」
「それで勉強ね。」