【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
「よし、ワシは決めたで。」
柘浦は興奮冷めやらない様子で鼻息荒く言った。
「ワシの人生で初めての彼女は…沙良ちゃんや!
猛アピールせななぁ。な?蘇枋。桐生君。」
「わぁ、凄いね。暑苦しいからほどほどにね。」
「柘ちゃん、落ち着いて。余裕のない男はモテないよ♡」
「だぁっ、しまったぁ。本音がつい…
けど、沙良ちゃん…手ぇ握ったら震えとったな。ワシが勢いつけすぎたからやろか?」
「いや、彼女は…そうなっちゃったんじゃないかな。」
「はぁ?」
「蘇枋隼人です。君と同じ1年生、趣味は世界のお茶菓子を食べたり、お茶を飲んだりする事。沙良ちゃんて、呼んでいいかな?」
『あ、はい…』
「沙良ちゃん、君はもしかして…
さきの町から来たんじゃない?」
『えっ…そうですがどうして…』
「…そっか、やっぱりそうなんだ。
また話すね…そのうち。」
蘇枋はニコリと笑ったが、その表情はどこか浮かなかった。
「蘇枋お前…沙良ちゃんの知り合いやったんか!?何で言わへんかってん。」
「いやいや、知り合いだなんてそんな。たまたま小さい頃住んでいた町で、見たことあるような気がしたんだよ。」
「はぁー?そんなん、覚えてるか?普通。」
「ははっ、柘浦君の脳味噌と比べないでおくれよ。」
「蘇枋さん…笑顔で凄い事を…」
「………」
言い終えてから、蘇枋は喋らなくなった。
何かあるな。ま、別に関係ねぇけど。
「全員終わったかー?よし、じゃあ皆で写真撮るぞ!
沙良、真ん中来いよ。」
梅宮に誘導され、女は前列の真ん中に小さくなった。
横に並んだのは梶。
女の側に行くと、珍しく梶は自分からヘッドフォンを取り、口に入った飴を出した。
「………遠藤さんには…」
『え…?』
「色々世話になった。去年は衆ごと見回りしてて、ちょうど多聞衆1年の管轄内に、遠藤酒店があったから…」
『そうなんですか…祖父がお世話になりました。
これからもよろしくお願いします。』
「………」
『…?』
「…また……写真みたいに…」
『…写真?』
「……なんでもねぇ。」
梶はそう言うと、再びヘッドフォンをつけ、飴を口に入れた。