【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
『遠藤…沙良です。
遠藤酒店をやっていました、遠藤保の孫です。父が祖父の後を継ぐために、引っ越してきました。
これからよろしくお願いします。』
深々と頭を下げる女。
「よっ、これからよろしく。」
「何年生?」
「総代、質問てありですか?」
皆は拍手したり、やいやいと騒いだりしている。
梅宮は女に何か言うと、女は顔を赤らめながら頷いた。
「よーしお前らぁ、まずはお前らも自己紹介だ。
名前、学年、あとは好きな食べ物とか趣味とか適当に。質問もいいそうだ。」
次々と紹介が済み、あっという間に俺の番になった。
「桜遥…1年…食いもんはオムライス…」
そう言うと、女と目が合い、薄っすらと微笑んだように見えた。
「…っ………おっ、終わりっ。」
「桜さん、どうしたんすか?顔赤いですよ…」
「うるせーっ、黙ってろ。」
「よっしゃ。次はワシの番やな。柘浦大河、1年。趣味は筋トレ。早速やけど沙良ちゃん…」
柘浦は席を立つと、女の方に向かって歩いて行った。
コイツが多分やること…皆、既に気づいてニヤニヤとしている。女がどう返すかに興味があるんだろう。
「君の美学は何や!?」
『…っ……』
女はたじろいだが、直ぐに返した。
『考えた事も…ないです。
ただ、目立たないように、人に迷惑かけないように、不快にさせないようにするにはどうしたらいいかな…って考えながら生きてるんですが、なかなか上手くいかなくて…
すみません、こんな回答でいいで…』
「沙良ちゃんっ、アンタ、なんちゅー謙虚で、思慮深い人間なんやっ。ええ、うん。ええ!」
女の手を握ると、目を輝かせる柘浦。
『そんな…大それたものでは…
なので私には美学なんて素敵なものはない、というのが答えです。つまらなくてすみません…』
目をパチクリさせ、ふっ、と笑う柘浦。
「ほんなら沙良ちゃん、これから見つけていこか。
ワシと一緒に!」
コイツがこんなタイプとは思わなかった。
席に戻ってきた柘浦の頬は興奮で紅らんでいた。
「やぁー、女の子に対してあんなに情熱的な柘ちゃん、初めて見たよ。やっるー♡」
「意外に積極的なんだね。」
「柘浦さん、意外にも女性にグイグイ…と。」