【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第2章 出会い
「やだ、梅ちゃん。可愛い子連れちゃって。もしかして彼女かい?」
「ははっ、違うよおばちゃん。新しい仲間。遠じいのお孫さんだ。」
「えぇっ…そうかい、あんたが。噂は聞いてたのよ。
よろしくね。はい、これ。持ってきな。」
「おー、ありがとう。はい、沙良。」
お肉屋のおばさんから受け取ったコロッケを、1つ差し出す梅宮さん。
『ありがとう…ございます。』
「ん?敬語。」
『あ…ありが…とう。』
「ふっ、まぁ段々慣れていったらいいよ。アイツらのことも。」
写真に映っていた人達の事だろうか?
ハフハフとコロッケを頬張って歩いていると、あっと言う間に喫茶ポトスに到着し、梅君がドアを開けた。
「ことはー、沙良来たよ。」
「沙良ちゃんっ、ごめんね。梅が強引に…」
『あ、ううん。大丈夫。』
梅君が中に入ると、同じ制服を着た男の人の半数が会釈をした。
皆、梅君の後輩…とかかな。
急に店に入ってきた存在が目立つからか、視線は一気にこちらに注がれた。
気まずい…早く座りたい…
side 桜
梅宮と一緒にポトスに入ってきた、見るからに気の弱そうな女。
こいつが沙良か…
「うわ…凄く綺麗な方ですね。星女の制服…優秀な方ですよ。才色兼備だ…」
「ホントだね。」
「ヤバいな…ワシ結構タイプかもしれん。彼氏いんのかな?」
「柘ちゃん、いないといーね♡」
店内がザワつき始める。
女はというと、梅宮から自己紹介を促され、赤くなってオロオロとしている。
何だコイツ…
苛立ちが増す。
「何固くなってんだよ。」
気づいたらそう口走っていて、店内がシン…とした。
「ちょっ…桜さん……言い方…」
「はぁ?こいつら相手に、そんな緊張する必要ねぇって言ってんだ。」
女は怒られたと思ったのか、顔を真っ赤にして先ほどより焦っている。
クソっ…だから…
「そうなんだよー、沙良。桜の言う通り。
俺達さ…お前が何言おうが誰も傷つかねぇし、お前を嫌う事もない。
ここにいる奴らは俺の自慢の連中なんだ。
安心して話してくれたらいいよ。」
女の背中をそっと押し、いつものようにニカっと笑う梅宮。
『…っ……』
女の目が潤み始めた。