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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第8章 ※歪み



やられた。

煽ったのに、逆に煽られて頭に血が上るのがわかった。

バスの中で沙良ちゃんから感じた蘇枋の香りを思い出し、ギリ…と奥歯に力が入る。


「あなたが沙良ちゃんとどこまでの関係か、正直どうでもいいんです。彼女を傷つけさえしなければ。」

俺を一瞥すると、蘇枋は笑顔で言った。

「あなたには負けませんよ。」


カランカラン





ポトスに入っていく蘇枋の背中を見つめ、俺も続いて中に入った。







ーーーーーーーーーーー

『あれ…条君、お店……休み?』

シャッターの閉まった店を見て、不思議そうに俺を見る沙良ちゃん。


そう…じいちゃんは始めから出かけるのは知っていたし、店は休み。


「あれぇ…?ホントだ。おかしいな…
今日はいるはずなのに…」

わざとらしく言うと沙良ちゃんの背中を押し、2階に誘導する。


「沙良ちゃん…じいちゃんが帰ってくる前に、ちょっとだけ2階に寄ってくれるかな…?
渡したい物があるんだ。」


嘘じゃなかった。


2階、と聞いて少し戸惑いながらも、素直に階段を登ってくれる姿に安堵した。

借りている物だから汚したくない、と一度帰宅し、着ていたワンピースから私服に着替えた沙良ちゃん。
少しゆったりとはしているけれど、十分キレイめな紺のワンピースだ。

多分俺がじいちゃんに見せたいって言ったから…
沙良ちゃんの気遣いに、改めて心が温かくなった。


ガチャリと扉を開けると、ベッドの方を軽く見ながら俯いた。

「……入って?」

そっと腰を押すと、机の上の白い箱に目をやった。

「沙良ちゃん…座って。」

机の前に座らせると、向かい合うように胡座をかいて座り、箱を手渡した。

「これ、プレゼント…開けてみて。」

戸惑いながらも、ありがとう…と箱を開けると、出てきた物に目を見開いた。

『っ…これっ…』


「ふふっ…商店街にあったアクセサリーショップで買ったんだ。」

沙良ちゃんを迎えに行った時、送った時…
せっかくだからと商店街を歩く事が多かった。

店から高架を越えて遠藤酒店、ポトス…
いつもならその辺りまでしか行かないけれど、たまたま東に行った時見つけた、小さなアクセサリーショップ。

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