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【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)

第7章 ※本当の私



『ぁ……あの………』

皆の視線が集まり、顔が熱くなる。


『今日は…とても素敵な会を…私なん……私の為に…
本当にありがとうございました。』

優しい皆は小さく頷きながら、私の目を見て聞いてくれている。

桜君がピザを取ろうとする手を椿さんにピシッと叩かれ、小さく舌打ちをしていた。
ふふっ、と笑うと桜君と目が合い、お互い恥ずかしくなる。


『あの…これからも……どうか…
よろしくお願いします。』


深々とお辞儀をすると、大きな拍手が起きた。

「よっ、沙良ちゃん!」

「これからもよろしくなっ。」

軽くお辞儀をすると、椿さんと目が合う。
優しい眼差しで頷く椿さんに、つられて頷いた。


上手く…言えたのかな?
安心して座ろうとすると、ふいに、色紙の文字が目に飛び込んできた。

『…っ……』

細かな文字が目に入る。


"沙良ちゃんが、まこち町に来てくれて良かったよ。"

"沙良ちゃんがポトスに来てくれると、皆気持ちが明るくなるんだ。"

"これからも、風鈴と、この町の事よろしくな。"


私へのメッセージ。

心のこもったメッセージ…

『…………』

「…沙良?」


いつまでも座らない私に声をかけてくれる椿さん。


『………あの…』

和やかに談笑する皆の視線が再びこちらにちらほらと向き始め、ドクンと心臓が震えた。

色紙を椅子の上に置き、呼吸を整えると、何か察したかのように、まだ話をしていたメンバーにも聞こえるよう、梅君が声をかけた。

「皆、聞いてくれ。」


シン…と静まりかえる店内。

「沙良ちゃん…?」

隣に座る蘇枋君も驚いたように私を見る。


皆が私と向き合って、言葉を紡いでくれたように


私も皆と向き合いたい。


自分と向き合いたい。


変わりたい。


椿さん…これで…いいんだよね…?


間違ってないよね…?


『私……』

握りこぶしにぎゅっと力を入れる。



大丈夫。



『私は…小学生の頃から…人と関わるのが苦手で…
いつの間にか…誰かと親しくなることを…諦めていました…向き合う事を…諦めていました…』

店内がザワっとすると、1人が口を開いた。

「うるっせーなぁ。今沙良が喋ってんだろうが…」

そう言ってくれたのは桜君だった。
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