【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
『あの…梶君…今日はありがとう…』
右隣になった梶君は私を見ずに、飴を口から出すと、おう、と小さく言った。
「おぃ梶ぃ…オメぇ、いくら今日の沙良ちゃんがメチャメチャ綺麗だからってぇ、そんなぁ態度はねぇだろぅ!照れてんのかぁ!?」
遠くに座る榎本君の声に、皆どっと笑う。
ぐぬぬ…と顔を赤らめる梶君。
照れて…くれているのかな…?
ふと梶君を見ると目が合った。
『あの…どう…かな…?』
恥ずかしく思いながら聞くと、梶君は一声
「可愛いんじゃねぇ………?」
と呟いた。
「ホントですよね。こんなに可愛い沙良ちゃんの隣になれるなんて、光栄だなぁ。」
ニコニコと言うのは左隣の蘇枋君。
『ありがとう…』
「飾り付け、いいじゃない。よくやったわね、この短時間で。皆流石よ。」
真ん前に座る椿さんが言った。
「なー、俺チョイスのオードブルも褒めてくれよぉ。
いい仕事しただろ?」
口を尖らしているのは斜め前に座る梅君。
『オードブル…梅君が準備してくれたの…?』
思わず声が出た。
「あぁ。ちゃんと沙良が大好きなトマトも入れてくれ、って頼んだら沢山入れてくれたんだよな。」
オードブルの真ん中に積まれたミニトマトを指さす梅君。
「うっわ…性格悪いわね。」
「…?何で?体にいいじゃん。」
「そりゃそうだけど…ねぇ?桜。アンタもトマト嫌いよね。いつもオムライスについてるミニトマト、残してるものね。」
「っ…んだよ、わりーかよっ…」
椿さんの右隣に座る桜君。
椿さんの一声で皆乾杯をし、催しが始まった。
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榎本君と柘植浦君の二人羽織に笑い
杏西君と高梨君の漫才に笑い
蘇枋君と楡君、梅君の歌に感動し
桐生君の手品に驚いた。
『わぁ……』
百瀬さんからは、アート調に描かれた似顔絵のプレゼントがあった。
ビビッドな色合いで、スタイリッシュなミニチュアのような自分が描かれている。線の正確さはデジタルのようだ。
『ありがとうございます…大切にします…』
絵を抱き締め、お礼を言った。
一通り演目が終わり、食事も少なくなった。
杏西君が周りを見渡し、口を開いた。