【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「凄いな…晴竜君にこんな特技があったとは…
プロみたいだよ。本当に沙良なのか?」
ははっ、と笑う父も嬉しそうだ。
「母さんによく似ているよ…」
茶の間に新しく置かれた仏壇には、お母さんとおじいちゃんの写真が飾ってある。
「ホント…お綺麗なお母様だったのね…」
写真の中で微笑むお母さんを見て、椿さんがそう言ってくれた。
カラカラ…
「こんにちはぁ…」
「あらっ、十亀ね…どうする?何か演出する…!?十亀ー!びっくりするわよー、沙良が綺麗すぎて。まだ襖開けないでね!」
「ぇ……何ぃ…?…何事…?」
「ジャッジャーンっ!お披露目ー!
喜びなさい、十亀。アタシ達以外でアンタが1番に沙良を拝めたんだから。」
椿さんがスーっと襖を開けると、目の前に条君が現れた。
「…………ぇ…沙良ちゃん…なの?」
目を見開いて、口を半開きにする条君。
『こんにちは…
今日も…ありがとう。』
「ふふっ、予想通りの良い反応するわね、十亀。
どう?メチャメチャ可愛いでしょ?」
「人間とは思えないや…何か…空想上の別生物みたい…」
「うんうん、アンタもそう思う?私も晴竜と天使か妖精かで揉めたもの。さ、じゃあ行きましょう。
皆も丁度、準備できたみたいだから。」
椿さんはスマホを確認すると、ブーツを履くために畳に座った。
条君はゆっくりと戸の近くまでくると、マジマジと私を見つめ、目尻を下げて口を開いた。
「俺ラッキーだなぁ…こんなに綺麗な沙良ちゃん見られて。誕生日会…楽しんでね。」
今日は土曜日。椿さんや皆もいるのに、条君はあと2日だから、とわざわざ送迎のために店に来てくれていたのだ。
『…ありがとう。』
前を歩く椿さん達を見つめながら、条君はヒールを履いて歩く私に歩調を合わせてくれた。
この間の事で、なかなか顔が見られなかった。
気まずいままは嫌だ…
せっかく来てくれているのに…
意を決して口を開いた。
『条君…今日もわざわざありがとう。
この前は…ごめんね。』
「ううん…俺の方こそ、ごめんね…」
柔らかい表情で私を見つめる条君。
その表情に、ほっとした。
カランカラン…パーン、パーーン!
『…っ……』
「「「「「沙良ちゃん、誕生日おめでとう!」」」」」