【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
震える声で、か細く呟く沙良ちゃんを抱きしめる。
『…っ……』
「応えてくれなくていいよ。
何年君を想ってきたと思ってるの?そんなに簡単に、じゃあもう好きでいるのを辞めるとは…言えないよ。」
『蘇枋…君…』
「ごめん沙良ちゃん…酷い事して。
怖かったよね…もうしないって約束する。だから…」
沙良ちゃんを抱き締める腕に力がこもる。
「君のこと、好きでいさせて…」
side 沙良
ごめん…と呟く蘇枋君のウエストあたりに、ゆっくりと手を添える。
『大丈夫…もう…謝らないで…』
蘇枋君は、もしかしたら本当はこんな事したくなかったのかもしれない…
私をずっと想ってくれていたとして…
こんな状況になったから、感情が露わになってしまっただけなのかもしれないと思った。
好いている人を前に、思ったような行動がとれないのだとしたら…
"お前の事…傷つけてばっかりだな…"
身に覚えがありすぎて…
蘇枋君を責める気になれなかった。
「許してくれるの?」
『……うん。』
「前みたいに…笑ってくれるかな?」
『…勿論。』
「俺と付き合ってくれる?」
『……それは…ごめんね…』
何だ…引っかかると思ったのに、と蘇枋君は笑った。
『そろそろ…帰らなきゃ…』
いくらお父さんが遅くても、家には先に着いていなければ不自然だ。
「大丈夫、もう説明しておいたよ。」
父には私がお酒を少し飲んでしまい、カフェで酔いを覚ましてから帰宅するとメッセージを送ってくれたようだ。
『よく電話…かかってこなかったね…』
「かかってきたよ。 沙良ちゃんはトイレだって言ったら信じてくれた。信頼されているからね。」
ニコニコと言う蘇枋君。
『ありがとう…帰ろう…』
「ふふっ、そこ…突っ込む所…」
『…?』
「何でもないよ…」
急いで身なりを整え、ホテルを出た。
タクシーを捕まえると家を目指して出発したけれど、その間蘇枋君が私に触れる事はなかった。
「おやすみ、 沙良ちゃん…
また明日。誕生日会、楽しみにしているね。」
『おやすみなさい…。』
何事もなかったかのように微笑んで家に帰ろうとする蘇枋君を呼び止めた。
『蘇枋君っ…』
「……何かな?」