【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
頭がフワフワとして地面を踏んでいるような感じがしない。
『あれ…私…どうし…』
ガクッ
膝の力が抜けて転びそうになり、思わず目を瞑った。
「っ…ぶねぇなぁ…」
目を開けると桜君が抱きとめてくれていた。
『ありがとう…桜君…』
「お前眠いのか?目ぇ半分しか開いてな…」
私を見た桜君の顔は、私の顔から15センチくらいしか離れていなかった。
「……っ…」
真っ赤な顔で、パッと横を向く桜君。
「代わって。」
蘇枋君が桜君と交代し、腰に腕を回した。
「沙良ちゃんもしかして…お酒飲んでる?」
『ぇ……お酒…なんて…のんれな……』
うまく喋ることができない。
蘇枋君の顔が目の前にあって、くっついてしまいそうだ。
『わっ…私……お酒の匂い…わかるもん…』
お酒の香りはしなかった。
けれど確かに飲んだことのない味ではあった。
知らず知らずに飲んでしまったのだろうか…
なぜ……?
「沙良ちゃん、何か飲み物飲んでいたよね?あれはどうしたの?」
『…雨…竜さんが…持ってきてくれて…』
「何時頃?」
『…椿さんの……ダンスの…前…』
蘇枋君の顔が近い。無意識に頰に触れていた。
『蘇枋…君の目の色が……綺麗…』
妙に気分が高揚して、恥ずかしさも何も感じない。
はぁ…と蘇枋君はため息をついた。
「楡君…沙良ちゃん、足に力が入らないみたいだからタクシーで帰るよ。2人は先に帰ってて。」
「え…そんな。やっぱりお酒ですか?
俺たちも一緒に乗りますよ。二人を置いていけません。」
「大丈夫。眠そうだし、後部座席に寝かせてあげたいんだ。そうなると、4人で乗るのは厳しいからね。」
「せめてタクシーが来るまで…」
「楡君…」
「…っ……わかりました。」
楡君と桜君は歩き出した。
『ごめん…ね…?自分でタクシーに…乗って…帰るから…』
「運転手が変な奴だったらどうするの?」
『じゃあ…お父さんに……ぁ…』
「……?」
『今日は組合の…飲み会だからいない…
運転もできないんだった…』
「………」
『蘇枋君…椿さんのお店で…休ませてもら…』「沙良ちゃん…」
蘇枋君に腕を引かれて入った先は
HOTELと書かれた建物だった。