【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「よーし…それじゃ、私のステージ見ててね。」
椿さんが私と楡君の背中をポンと叩き、ステージの方に進んで行くと、ピーっという指笛の音や、大きな歓声が聞こえた。
『椿さん…何やるの…?』
「ふふっ…凄い人気だね。沙良ちゃんも驚くよ、きっと。」
椿さんがステージに立つと、ポールに掴まり、ライトがついた。
次の瞬間
曲に合わせてしなやかにポールに絡まり、腕の力で体を支えたり、視線を客席に向けながら足だけ絡ませて落ちてきたり…
自由自在に激しく動く椿さんに、皆釘付けになっているのがわかった。
『…凄い……』
笑顔でダイナミックに動く椿さんは本当に綺麗でキラキラとして楽しそうで…
椿さんと目が合うと、ピシッと私を指さした。
『え………』
微笑みながらまた片手でくるくるとポールの周りを回ると、客席の歓声はピークになった。
自信を持ちなさい。
殻を破れ沙良。
そう言ってくれているようで涙が溢れた。
ーーーーーーーーーーー
「どうだったぁ?」
頬が蒸気した椿さんが戻ってきた。
「感動しましたっ…メチャクチャかっこよかったっす…」
楡君が興奮気味に前のめりになった。
「ふふっ…良かったわ。沙良は?」
『…素敵でした。椿さん、輝いてました。』
「ふふっ…アンタだって輝けるのよ。」
私の頰に触れながら言った。
「アンタさえ勇気を出せばね。」
『はい……』
「…楽しんでくれて良かった。また来なさいよ。
今日はお休みだけど、しずかの歌も凄く素敵だから。」
是非っ!と楡君が元気に言うと、私達はお店を後にした。
「着替えちゃったんだね、沙良ちゃん。」
『うん…あの格好のままでは帰れないから…
でもメイクと髪の毛はそのままにしてもらったから嬉しい。』
へへ…と笑うと楡君が言った。
「沙良ちゃん、前から思ってた事…言ってもいい?」
『前から思ってた事…?』
「前より笑顔が増えたよね。
沙良ちゃんが笑うと周りが明るくなるから、もっともっと笑ってほしいな。」
『……そうかな…』
「そうだよ。俺たちも頑張って笑わせるね。」
ニッコリして楡君はそう言った。
店を出てから少しずつ…
見える景色がおかしくなっていく事に気付いた。