【WIND BREAKER】愛なんて知らなかった(R18)
第7章 ※本当の私
「綺麗よ、沙良…天使かと思ったじゃない……」
『晴竜さんのおかげです……』
「どう?椿…何か直しあったら言って。」
椿さんと晴竜さんはじっと私の顔を見つめる。
「流石よ、晴竜…相変わらずいい仕事するわね。
ただ…ワンピースとリップが合うかしら…?」
「あぁそれなんだ、衣装。」
「えぇ。結構ガーリーな雰囲気でしょ?ってなると、リップが濃すぎるかもしれないわ…似合うんだけれどね…」
リップの色が合うとか合わないとかあるんだ。
さっき見たらファンデーションやチークも、びっくりするほど種類があった。
二人のプロ意識に感心してしまう。
「ごめん、沙良ちゃん…ちょっとオフするね。」
晴竜さんはシートで唇を拭き取り、オレンジのリップを筆でつけてくれた。
「どうかな…あとは衣装着てみて調整…」
「そうね…沙良、衣装はこれでいいかしら?」
ふふっ、と笑って柔らかいベージュのワンピースを広げてくれた椿さん。
『可愛いですっ…』
「しずかの衣装、凄くたくさんあって、厳選するのに時間かかっちゃった。沙良に合うのは絶対これ!って思ったのよ。気に入ってくれたなら良かった。」
フワリと開くとウエストが程よく締まった、レースのスカートが姿を現した。ピアノの発表会に出られそうな位、とても上品だ。
袖を見ると
オーガンジーだった。
「どうかしら?沙良。リップも合わせなきゃだから、ちょっと着てみましょう。着替え場所はこっちよ。
……沙良?」
手をギュッと握った。
汗が噴き出してきそうだ…
「…どうしたの?ワンピース、好みじゃなかったかな?自分でも一回見てみ…」「晴竜黙って。沙良、何か言いたい事があるなら言ってちょうだい。」
『…っ……』
ワンピースは凄く可愛い。
けれどこの服を着たら腕が見えてしまう。
椿さんが時間をかけてくれた服なのに…
また自分のために時間をかけてもらうのは申し訳ない…
着てしまえば良いのでは…
けど二人を戸惑わせてしまうかも…
何から話せば…何て言えば…
どうしていいかわからず、言葉に詰まる。
「ちょっと椿…沙良ちゃんは自分の気持ち伝えるのが苦手なんだから、サポートしてあげれば…」「だからよ。」
椿さんは椅子に座った。